研究課題/領域番号 |
23K14498
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松田 研史郎 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (70642619)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / マスト細胞 / Clec12b / ATP / P2RX7 / C型レクチン受容体 / 抑制性免疫受容体 / アレルギー |
研究開始時の研究の概要 |
最近、我々の研究室では、皮膚マスト細胞にC型レクチン受容体Clec12bが特異的に高発現することを明らかにした。Clec12bは、細胞内領域にImmunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif を有することから、皮膚マスト細胞の活性化を負に制御する抑制性免疫受容体であると考えられる。しかし、皮膚マスト細胞における機能及びアトピー性皮膚炎に代表されるアレルギー病態への寄与は明らかとなっていない。本研究では、Clec12bを介した皮膚マスト細胞の活性化制御機構に焦点を当て、皮膚マスト細胞を機軸としたアトピー性皮膚炎に対する治療法の開発の基盤的知見を得る。
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研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)に対するClec12bの機能解析のため、野生型及びClec12b欠損マウスに対してダニ抗原(HDM)を塗布することでAD様皮膚炎を誘導し、臨床症状、皮膚病理所見(炎症性細胞浸潤、表皮層の肥厚)を解析したところ、Clec12b欠損マウスでは、野生型マウスと比較して有意に病勢が悪化した。また、皮膚マスト細胞の脱顆粒が亢進した。Clec12bが皮膚マスト細胞に選択的に発現していることから、Clec12bが皮膚マスト細胞の活性化を制御するとの仮説のもと、皮膚由来培養マスト細胞を作出し、HDM由来因子(HDM、Derf2、LPS)及びHDMによって放出されるDAMPであるATPで刺激したところ、皮膚由来マスト細胞は、ATPで脱顆粒した。さらに、ATP受容体の発現を解析したところ、P2RX7を発現していることが分かった。そこで、皮膚由来培養マスト細胞に対してP2RX7選択的拮抗剤を添加し、ATP刺激による脱顆粒を解析したところ、P2RX7選択的拮抗剤添加によって脱顆粒は完全に抑制された。このことから、皮膚マスト細胞はATP刺激によって脱顆粒し、Clec12bはATP依存的な脱顆粒を抑制すると推論した。そこで、野生型及びClec12b欠損マウスに対してATPを投与し、皮膚マスト細胞の脱顆粒を解析したところ、Clec12b欠損マウスの皮膚マスト細胞では、野生型マウスと比較して脱顆粒比率が有意に増加した。また、皮膚マスト細胞も培養マスト細胞と同様にP2RX7を発現していたがP2RX1やP2RX4などの他のATP受容体は発現していなかった。これらのことから、Clec12bはATP-P2RX7依存的な脱顆粒を制御することで、ダニ抗原誘発性皮膚炎を制御していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに、Clec12bによる皮膚マスト細胞の制御機構の一端を解明できた。Clec12bが細胞内領域にITIMを有することから、IgE依存的なマスト細胞の活性化も制御すると推論される。現在、IgE-FcεRIとClec12bを共刺激することでマスト細胞の活性化が制御されるか解析中である。次年度は、Clec12bに対する機能的リガンドを同定予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Clec12bを含むC型レクチン受容体の多くは、タンパク質を修飾する糖鎖を含めた立体構造を認識する。そこで、Clec12bが糖鎖を認識すると仮定し、マウスClec12b-Fcを加え、糖鎖アレイにより特異的に結合する糖鎖を同定する。さらに、糖鎖アレイにより同定された候補因子をBSAと結合させ、プレートに固相化し、Clec12b-Fcとの結合をELISA法により解析する。また、トランスフェクタントによりClec12b発現レポーター細胞を樹立し、レポーターアッセイにて膜型Clec12b-Fcの結合を確認する。 Clec12bに対する機能的リガンド同定後、野生型及びClec12b欠損マウスに対してHDM誘導性皮膚炎を誘導し、ポリアクリルアミド骨格を付加したClec12bリガンドを皮内投与し、皮膚炎の臨床症状スコアを解析する。また、皮膚マスト細胞の細胞数、脱顆粒、表皮層の肥厚、炎症性細胞の浸潤を病理組織学的手法及びFACSにて定量する。
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