研究課題/領域番号 |
23K14528
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 まどか 京都大学, 医生物学研究所, 研究員 (80910025)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ウイルス間相互作用 / 持続感染 / オルソボルナウイルス / 社会ウイルス学 / ボルナ病ウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
ウイルスは独立的に増殖するのではなく、集団として相互作用(社会性)することで生存を有利にすることがある。これまでに、ボルナ病ウイルス(BoDV-1)が持続感染する細胞間で、ウイルス蛋白質(G)の発現に不均一性を観察した。そこで、集団内で持続感染期であること情報伝達しGの発現量を制御することで、感染を長期化させるBoDV-1の社会性形質ではないかと仮説を立てた。 本研究では、感染率で変化するBoDV-1の遺伝子発現変動を解析し、情報伝達因子の同定および機能を評価する。さらに、同属間で社会性形質の保存を明らかにする。また、感染の排除が困難なウイルス感染症の制御方法の開発にもつながると考えられる。
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研究実績の概要 |
ウイルスは均質に増殖するのではなく、集団として相互作用(社会性)することで生存を有利にすることがある。これまでに、ボルナ病ウイルス(BoDV-1)が持続感染する細胞の60%が、子孫ウイルスの形成に必須であるウイルス蛋白質(G)を発現しないという感染細胞間での不均一性を発見した。持続感染時にウイルスタンパク質が一様に発現しないことから、BoDV-1は感染細胞間での社会性形質に利用して、感染を維持しているのではないかと仮説を立てた。 この仮説を検証するために、細胞間コミュニケーションの重要な媒介経路である細胞外小胞に着目した。そして、細胞外小胞に含まれる核酸(small RNA)を比較し、感染細胞中のウイルス遺伝子の発現を変動させる伝達因子を同定することを第一の課題とした。これまでに、非感染、ならびに持続感染細胞から分泌した細胞外小胞の回収に成功し、small RNA sequence解析に進んだ。現在、伝達因子となる候補を調査している。また、持続感染細胞から分泌した細胞外小胞の機能を確かめるために、細胞外小胞分泌阻害剤を添加した感染拡大期の細胞に反応させ、ウイルス複製およびウイルス遺伝子発現を評価することを予定している。本年度実施した研究内容は、本研究課題の根幹になるものである。それに加えて、哺乳類に感染するウイルス間のコミュニケーションは報告例がなく、挑戦的なウイルス研究の基盤になる。 今後、伝達因子を同定するために、伝達因子候補を封入した細胞外小胞を作製し、感染細胞中のウイルス遺伝子発現および複製への影響を評価する。これらの評価により、BoDV-1の社会性機構による生存戦略の解明に迫る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染を長期化させるメカニズムとなるBoDV-1のウイルス間社会性形質を明らかにするために、細胞間コミュニケーションを媒介する細胞外小胞に着目した。しかしながら、細胞外小胞を回収する方法を確立することに、想定以上に時間を有した。そのため、本研究課題の進捗が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞外小胞による伝達因子の同定、およびその作用機序の解明を遂行する。まず、持続感染細胞から分泌した細胞外小胞の機能を確かめる。そして、伝達因子候補を封入した細胞外小胞を作製し、ウイルス複製およびウイルス遺伝子の発現への影響を評価する。これらの結果から、BoDV-1間の社会性形質を示す伝達因子を同定する。その後、伝達因子の作用機序を明らかにするために、同定した伝達因子RNAの細胞内の局在を FISHで検討し、変異体作製によりRNAの機能領域を決定する。以上から、細胞外小胞を介したウイルス間コミュニケーションによる社会性を利用したBoDV-1の持続感染機構を明らかにする。
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