研究課題/領域番号 |
23K14556
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西澤 弘成 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (30846655)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 細胞老化 / BACH1 / フェロトーシス / FGF21 / がん増殖 / 微小環境 / 腫瘍 / 線維芽細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、過酸化脂質が蓄積したフェロトーシス細胞やがん細胞から周囲の細胞に過酸化脂質とフェロトーシスが伝播すること、線維芽細胞はがん細胞よりもフェロトーシスへの感受性が高いこと、フェロトーシスする線維芽細胞から増殖因子が分泌される可能性があること、などから、「化学療法下での悪性腫瘍の周囲の微小環境において、線維芽細胞がフェロトーシスを起こして増殖因子を分泌することで、悪性腫瘍が増殖、治療耐性化する」という、微小環境でのがん-線維芽細胞連関での悪循環が起きる機構を提唱および検証するものである。
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研究実績の概要 |
転写因子BACH1を再発現させることによってフェロトーシスを誘導することのできる線維芽細胞の構築に成功した。このフェロトーシスを誘導した線維芽細胞の培養上清によって、肝細胞癌の細胞増殖が亢進するとともに、細胞増殖を促進する機能のある遺伝子発現が上昇することが判明した。細胞増殖だけでなく、細胞周期も進められることが判明した。また同培養上清によって、老化関連分泌形質(SASP)の発現や老化関連βーガラクトシダーゼの活性などの細胞老化関連形質が抑制されることも判明した。その他、抗老化因子であるSIRT1の発現が上昇したり、DNA損傷が緩和されるなど、総合的に肝細胞癌の老化関連形質が抑制されることが判明した。この発現上昇したSIRT1ががん細胞でSASPの発現が上昇するのを抑制していることも判明した。さらに、老化形質の抑制は線維芽細胞で抗老化内分泌物質であるFGF21をノックアウトすると解除されることから、フェロトーシス細胞からBACH1依存性に分泌されるFGF21が抗老化因子として、フェロトーシス細胞由来の培養上清の老化抑制機能やがん増殖機能を引き起こしていることも明らかになった。その他、これらのフェロトーシス細胞由来の培養上清による影響は、がん細胞の増殖や老化関連形質だけでなく、一般の線維芽細胞の老化も抑制することも判明した。 これは、フェロトーシスした線維芽細胞が微小環境内で、がん増殖を活性化させる物質を分泌するという当初の仮説と一致する結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェロトーシスした線維芽細胞から老化関連形質を抑制するとともに、がん増殖を活性化させる物質が分泌されていることを示すことができ、概ね順調に計画は進んでいると考えられる。ここまで得られたデータはいったん、フェロトーシス細胞から老化抑制物質が分泌されるという内容で論文で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、フェロトーシスした線維芽細胞からの分泌物質ががん増殖を活性化することはある程度明らかになった。 今後、がん細胞からの脂質過酸化関連物質が線維芽細胞に与える影響を考察し、本研究計画の当初の仮説である、微小環境でのがんー線維芽細胞連関における悪性化機構を検証していく予定である。
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