研究課題/領域番号 |
23K14558
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笠井 優 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20938930)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 細胞接着 / がん転移 / 分子間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
がんによる死因の約90%は転移であり、血中循環腫瘍細胞は血管内皮細胞との相互作用を契機として転移先臓器へと浸潤する。すなわち腫瘍細胞と血管内皮細胞との相互作用を担う分子は転移のドライバーとして機能すると考えられる。申請者は、表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)法と独自のタンパク質ライブラリーを組み合わせ、SPRiバイオチップに固相化したタンパク質ライブラリーに対する腫瘍細胞の接着をリアルタイムかつ高感度に検出することを可能にした。これにより、腫瘍細胞と相互作用する血管内皮細胞上の細胞外タンパク質を網羅的に同定し、細胞接着を介したがん転移促進機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
がんによる死因の約90%は転移であり、血中循環腫瘍細胞は血管内皮細胞との相互作用を契機として転移先臓器へと浸潤する。すなわち腫瘍細胞と血管内皮細胞との相互作用を担う分子は転移のドライバーとして機能すると考えられるが、このような分子の報告はほとんどなく、これは網羅的解析手法の欠如によるものと考えられる。申請者は、表面プラズモン共鳴イメージング (SPRi) 法と独自のタンパク質ライブラリーを組み合わせることによって、腫瘍細胞と血管内皮細胞との相互作用を担う細胞外タンパク質間相互作用を網羅的に同定する系を確立した。本法はSPRiバイオチップにタンパク質ライブラリーをマイクロアレイ状に固相化し、個々のタンパク質に対するがん細胞の接着を検出することにより、細胞接着を介したがん転移促進機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、タンパク質ライブラリーの拡充を図ると共に、SPRi法を用いてタンパク質ライブラリーと腫瘍細胞株との相互作用スクリーニングを行い、白血病細胞株と相互作用する複数の候補分子を得た。タンパク質ライブラリーは免疫グロブリンスーパーファミリー (IgSF) のうち細胞膜に局在する398分子種、セレクチンファミリー3分子種、インテグリンファミリー24分子種を対象とし、細胞外領域にFcを付加して精製を行った。IgSFは339/398 (85.2%)、セレクチンファミリーは3/3の精製を完了した。スクリーニングにおいて腫瘍細胞との相互作用を認めた候補分子にはこれまで転移に関する報告が無い分子が含まれた。候補分子に関して、ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) における発現をノックダウンし、腫瘍細胞との接着アッセイを行った結果、当該遺伝子のノックダウンによって接着が低下したことから、これらは腫瘍細胞-血管内皮細胞間の相互作用を介して転移を促進する可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質ライブラリーの準備状況は、IgSFとセレクチンファミリーに関して概ね順調に進んでいる。α鎖とβ鎖の二量体から成るインテグリンファミリーは選択的にヘテロ二量体を形成するFc変異体CH3A、CH3Bを用いて精製を試みたが、発現する組み合わせがわずかであったため、精製方法を改善する必要がある。一方で、スクリーニングの実施状況は計画よりやや遅れている。本スクリーニング系は1つのSPRiバイオチップに対して連続して複数の細胞株との相互差作用を検討することが技術的に可能であるが、バイオチップに接着した細胞を剥離することが困難であったため、測定する細胞株の数が限られてしまった。また、バイオチップへの固相化に必要なタンパク質の収量を用意することが難しい分子が存在し、低濃度であっても腫瘍細胞との結合の検出が可能となるよう、実験系の感度向上が課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニング被検分子の拡充を図る。収量が低い分子について腫瘍細胞との相互作用の検出を可能にするため、スクリーニング系の感度向上を目指す。具体的には、従来のSPRiバイオチップへのタンパク質の固相化はアミンカップリングにより行っていたため、タンパク質の配向性を制御できない問題点があった。Protein Aバイオチップを用いてタンパク質C末端のFcタグを補足することにより生理的な配向性を実現することができ、検出感度を向上することが可能であると考える。腫瘍細胞との相互作用を検出した候補分子について、血管内皮細胞を用いた接着アッセイ、経内皮浸潤アッセイによって腫瘍細胞の血管外遊出に関与する可能性をin vitroの実験系によって検証し、さらに当該遺伝子のfloxマウスとVE-Cadherin Creマウスを交配することによって血管内皮細胞特異的なノックアウトマウスを作製してin vivoにおける解析へと進める。また、すでに得られた候補分子には結合分子が報告されていない分子が含まれたため、SPRiによって当該分子とタンパク質ライブラリーとの網羅的結合解析を行う。同定された分子に関して、腫瘍細胞における発現をノックダウンし、血管内皮細胞との接着アッセイ、経内皮浸潤アッセイによって血管外遊出への関与を検討する。
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