研究課題/領域番号 |
23K14563
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蜂矢 健介 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (40914536)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 骨髄腫 / マクロファージ / 血管内皮細胞 / 空間情報 / 骨髄微小環境 / 血管 / 脂肪細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
多発性骨髄腫は治癒に至らない造血器悪性腫瘍である。治療抵抗性クローンが残存することで難治性を獲得するため、骨髄腫細胞がどのようにがん微小環境で生存しているのかを明らかにすることは重要である。T細胞やNK細胞だけでなく、間質細胞の働きも注目されており、特に血管新生や脂肪細胞は骨髄腫細胞の増殖・播種に関わることが複数の報告で示されている。空間情報に着目し、マクロファージの機能解析を行うことで、骨髄腫が幹細胞性を維持するメカニズムを明らかにし、新たな治療ターゲットの開発へと発展させたい。
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研究実績の概要 |
多発性骨髄腫は難治性の血液がんである。新規薬剤の登場により予後が改善しているものの、継続的な抗がん剤治療が必要とされ、いまだに治癒には至らない。難治性の克服には骨髄腫そのものの要素のみではなく、他の細胞との相互作用、特にがん微小環境におけるがん免疫の抑制メカニズムが重要と考えられている。骨髄腫細胞は主に骨髄中で増殖し、骨髄中にニッチをもつと考えられている。ニッチの構成要素は間葉系幹細胞、マクロファージ、脂肪細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞など多岐にわたる。さらにはこれらの細胞は互いに作用している。しかしながら、多くの報告は骨髄液や末梢血液から単離したの解析が主体であり、空間情報に着目した解析はごくわずかである。 本研究では、多発性骨髄腫において今まで軽視されがちであった、骨髄マクロファージの空間的な情報に注目した。2023年度は、最善の骨髄腫モデルとされているVk*MYCマウス由来の細胞株を用いた実験系を用いて、骨髄腫細胞、マクロファージ、非免疫細胞を中心に解析を進めた。それにより、骨髄腫細胞とマクロファージの分布に偏りがあること、隣接する細胞に一定の傾向があることを見出している。基本的な実験系を完成させ、新たな治療ターゲットを見出すことに成功した。骨髄腫細胞、マクロファージ、そして非免疫細胞の連関に着目しており、新規性が高いと考えている。現在はコンディショナルノックアウトマウスを作成しており、生体イメージングを用いた解析を進めている。本年度は治療標的に関わるシグナル解析をさらに進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
<理由>申請時に用いていたMOPC-70Aらを用いた骨髄腫モデルは、疾患モデルとしての限界を感じたため、より骨髄腫の病態を反映するVk*MYCモデルを採用している。初年度に当たる2023年度の研究計画は基本的な実験系の確立を目標としていた。早期に目標を達成し、空間情報に根ざした骨髄腫微小環境を構成する細胞らの機能解析を進めている。 <状況>本年度は、Vk*MYCマウス由来の骨髄腫細胞株を用いた実験系を完成させ、空間情報に着目した解析を進めている。従来困難とされていたVk*MYC由来株のゲノム編集を可能としたことで、今まで未知であった骨髄腫細胞とマクロファージ、そして非免疫細胞の相互作用を解き明かす実験系の実現へとつながっている。 実施したbulk RNA-seqの解析結果をもとに、新たな治療ターゲット候補の発見に至っている。すでに抗体薬で表現形の変化を確認しており、現在はコンディショナルノックアウトマウスの作成を進めている。併行してin vivo imagingの実験系確立に向け、条件を調節している。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画を上回って進捗しており、計画書提出後に発表された論文・報告を参考に変更を加える。申請時における2024年度の目標の半ばを達成しつつあり、実現可能性に留意しつつも、テーマのさらなる発展を目指したい。
1)計画ではマクロファージに注目したscRNA-seqを予定していたが、すでにオープンデータを用いた解析を進めている。加えて、希少細胞を中心とした scRNA-seqを行い、病態解明へと繋げたい。 2)コンディショナルノックアウトマウス作成は当初の計画に含んでいなかったが、期間内に実施可能であり、かつ重要性が高く、完遂させる。病態解析に大きく貢献する可能性が高い。 3)In vivo imagingも当初の計画に含んでいなかったが、期間内に実施可能である。近年、空間情報から新たな知見を生み出す上で重要性を増しており、本研究においても薬剤耐性メカニズムの解明に大きく寄与することを想定している。
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