研究課題/領域番号 |
23K14575
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
松尾 謙太郎 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (90882176)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | DLL3 / EVs / 消化管神経内分泌細胞癌 |
研究開始時の研究の概要 |
Notch受容体の一つであるDelta-like-3(DLL3)が、癌細胞の分化の制御調節機構である上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition; EMT)を調整し転移や浸潤に関与している。さらに注目したのが細胞外小胞:Extracellular vesicles(EVs)で、癌細胞から放出され細胞間のコミュニケーションツールとして癌の浸潤・転移に深く関与している。本研究では、消化管神経内分泌細胞株のECC細胞からのEVsの機能をDLL3とEMTを中心に解明することで、消化管神経内分泌細胞癌の浸潤・転移の機構を明らかにし治療戦略の基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、消化管神経内分泌細胞癌(GI-NEC)の細胞株から放出されるエクソソーム(EVs)に内包されるDelta like 3 (DLL3)と上皮間葉転換(EMT)を中心に解明することで希少腫瘍であるGI-NECの浸潤・転移の機構を明らかにし、治療戦略の基盤を構築することである。 本年度は、直腸GI-NEC由来の細胞株(ECC4)と胃GI-NEC由来の細胞株(ECC10)からEVsを回収し、その特徴を解析することとした。ECC4およびECC10の2種類の細胞株を、それぞれEVs回収用FBS入りの状態で培養し、超遠心法でEVsを回収した。Western Blotting(WB)法を用いてEVsマーカーの発現を解析したところ、両細胞のEVsで、CD9、CD81、TSG101の発現を認めた。また、電子顕微鏡により、100nm以下のEVsを確認した。ナノ粒子解析システムで粒度分布解析を行ったところ、ECC4由来のEVsは中央値130nm、ECC10由来のEVsは中央値113nmの粒子が分布していることが判明した。 さらに、WB法でECC4およびECC10細胞から回収されたEVs内にDLL3が発現していることを見出した。EVs内のDLL3が癌細胞間のコミュニケーションツールとして機能し、癌の浸潤や転移に関与している可能性が考えられた。次に、ECC4およびECC10細胞にsiRNA/DLL3を導入し、DLL3の発現を抑制したのちにEMT関連遺伝子(Snail、E-cadherin、N-cadherin、Slug)の発現をWB法で評価したが、発現量に変化は認められなかった。 以上より、ECC4およびECC10細胞から正確にEVsを回収することができ、そのEVs内にDLL3が発現していることを確認した。今後は、EVs中のDLL3の機能解明と応用可能性について研究を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画として、2023年度でECC4・ECC10 細胞からのEVsの回収と特徴を解析することおよびsiRNA/DLL3の導入されたECC4・ECC10細胞からEVsを回収し、EVsを解析する予定であった。 実際はsiRNA/DLL3の導入されたECC4・ECC10細胞においてEMT関連遺伝子の発現をWB法のみでしか確認していない。やや進捗状況としては遅れているため、次回はECC4・ECC10細胞にsiRNA/DLL3を導入しDLL3の発現を抑制した状態でEVsを回収し、EMT関連遺伝子(Snail、E-cadherin、N-cadherin、Slug)の発現をWB法で評価しEVsの機能解析を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、ECC4・ECC10細胞からEVsが回収でき、さらにEVs内にDLL3が発現していることがわかっている。ECC4・ECC10細胞にsiRNA/DLL3を導入しDLL3の発現を抑制した状態でEVsを回収し、EMT関連遺伝子(Snail、E-cadherin、N-cadherin、Slug)の発現をWB法で評価しEVsの機能解析を予定している。同時に、このEVsを胃癌・大腸癌細胞株に暴露させたのちに、浸潤能・遊走能を評価することとしている。 予想された事象がみられない場合は、EMT以外に癌関連線維化芽細胞や腫瘍血管内皮の変化を確認する。また、ECC4・ECC10細胞をsiRNA DLL3を導入しDLL3の発現を抑制した状態でEVsを回収し次世代シークエンサーを用いて遺伝子およびmicroRNAを網羅的に解析し、GI-NECにおけるDLL3の役割およびmicroRNAとの関連性を検討することを考えている。 さらに、食道GI-NEC由来の細胞株を当科で保有しているため、胃・直腸由来のGI-NECのみにDLL3が高発現しているのではなく、他の消化管由来でも発現していることを確認する。DLL3が高発現している場合は、siRNA/DLL3を用いてDLL3の発現を抑制し、細胞増殖の変化やその際の遺伝子変化を確認し、食道GI-NECにおいてもECC4・ECC10で生じた内因性アポトーシスの誘導(既報で報告済)が同様にみられるかを検討する予定である。 なお、食道GI-NECにおいてはすでにWB法では、DLL3が高発現していることが予備実験として確認できた。siRNADLL3を導入することで細胞増殖が抑制されるのであれば、ECC4・ECC10と同様の事象が生じることが期待される。それらの結果がまとまり次第、学会発表・論文報告を考えている。
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