研究課題/領域番号 |
23K14584
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
方 震宙 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40963806)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 中心体 / ユビキチン化 / BRCA1 / タンパク質分解 / DNA損傷応答 |
研究開始時の研究の概要 |
中心体は、分裂期に紡錘体極として染色体分配を担い、その異常は発がんの原因になる。最近、分裂期キナーゼAurora A がE3ユビキチンリガーゼ活性を持ち、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子産物BRCA1の結合分子OLA1をユビキチン化して分解に導き、G2期の中心体局在を低下させることと、DNA損傷後、G2期のOLA1の中心体局在が増強し、中心体数の増加を起こすことを明らかにした。本研究では、以上の機序の詳細と生物学的意義、その機能破綻による発がん機構を解明し、中心体を標的としたがんの新たな予防法や治療法の開発の分子基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
中心体は、分裂期に紡錘体極として染色体分配を担い、L字型に配置した母中心小体と娘中心小体、周辺の中心小体周辺物質 (PCM)から構成され、1回の細胞周期に1度複製される。一方、中心体の数や構造の異常は、多くのがんで観察され、染色体分配の異常や浸潤能の亢進に関与し、正常細胞にはない明らかながんの特徴で、がんの診断や治療の標的として有望である。 遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子産物であるBreast Cancer 1(BRCA1)は、従来DNA修復能が注目されてきたが、所属研究室ではBRCA1結合分子Obg-like ATPase 1 (OLA1)を同定し、BRCA1がこれらの分子やBRCA1結合分子BARD1とともに、中心体を制御し、その機能破綻が中心体数を増加させ、乳腺での発がんに関与することを明らかにしてきた。最近、分裂期キナーゼAurora AがOLA1をユビキチン化して、G2期のOLA1の中心体局在を低下させたことが明らかにした。本研究では、Aurora AのE3活性による中心体制御を中心とし、BRCA1関連分子のユビキチン化による中心体制御機構を解明し、さらには中心体のDNA損傷応答への影響、組織特異的な発がん機構への関与を解明することを目的としている。 解析の結果、Aurora AによるOLA1のユビキチン化に、分裂期キナーゼNIMA-related kinase 2 (NEK2) によるOLA1のリン酸化が重要であること、G2期のOLA1の中心体局在の低下が中心体複製に重要で、この異常が中心体数増加を引き起こすことも明らかにした。 DNA傷害性薬剤であるシスプラチン処理によって、細胞にDNA損傷を加えると、BRCA1と同様にOLA1の中心体局在が増強し、中心体数の増加を起こすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究により、分裂期キナーゼNEK2がOLA1のT124残基をリン酸化することで、Aurora AとOLA1が直接結合させ、Aurora AによるOLA1のユビキチン化を促進することを明らかにした。また、Aurora Aのキナーゼ活性は、Aurora AによるOLA1のユビキチン化には抑制的に働くことも明らかにした。また、Aurora AによるOLA1のG2期の中心体局在の低下がpericentrinなどの中心小体周辺物質(PCM)のタンパク質の中心体へのリクルートを促進し、G2期の中心体成熟を進めることを明らかにした。Aurora Aは、late G2~M期にCEP192を足場タンパク質としてPolo-like kinase 1をリン酸化して中心体成熟と紡錘体形成を促進することが知られている。よって、Aurora AはG2期にユビキチンリガーゼ活性が、late G2~M期にはキナーゼ活性が働いて、中心体成熟を進めると考えられた。これらの研究成果はCell Reports誌に発表した。さらに、Aurora AによるOLA1のユビキチン化に、BARD1も関与し、BARD1との結合能が減少するOLA1の変異により、この機能が障害されることも明らかにした。 一方、DNA損傷後Aurora AのE3活性に対する機能解析をしたところ、DNA損傷後、Aurora AによるOLA1のユビキチン化は亢進することが明らかにした。Aurora Aによるユビキチン化がタンパク分解に関与するK48鎖以外の K 鎖のユビキチン化も亢進することも分かっており、DNA損傷後はタンパク分解とは異なるシグナル伝達経路に関与する可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
Aurora AのE3活性の中心体制御能に関しては、Aurora Aによりユビキチン化される他のBRCA1関連タンパク質のユビキチン化について解析し、中心体数への影響やがん由来の変異の影響も解析する。さらに、精製した中心体タンパク質で、Aurora AをE3としてin vitroユビキチネーションアッセイを行い、ユビキチン化タンパク質を精製し、プロテオーム解析でAurora AのE3活性の新な基質を同定し、BRCA1関連分子との相互作用、中心体への影響を解析する。 一方、DNA損傷後Aurora AのE3活性に対する機能解析に関しては、既に作製したAurora Aの野生型とAurora AのE3活性が減弱する変異体F31I、F31Aの発現ベクターを用いて、核外移行阻害剤Leptomycin B処理による、DNA損傷前後、細胞質と細胞核の中にAurora Aの局在の変化を解析する。さらに、シグナル伝達に重要とされるユビキチン残基の変異体K6とK63R、タンパク質分解に重要とされるユビキチン残基の変異体K48Rを用いて、無処理の細胞とシスプラチンで処理した細胞から、核および細胞質画分を分画し、Aurora AによるOLA1のユビキチン化の新たな機能を解析する。 BRCA1関連分子の異常による組織特異的な発がんとの関連については、エストロゲン刺激のAurora AのE3活性、中心体のDNA損傷応答へ影響を解析する。また、エストロゲン処理によるAurora Aの発現量が上昇するため、エストロゲン処理による腫瘍形成へのAurora AのE3活性の相関性について解析する。
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