研究課題/領域番号 |
23K14591
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮井 雄基 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (90883538)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | がん微小環境 / がん関連線維芽細胞 / 免疫療法 / 補体C3 / がん間質 / 免疫治療 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物においては、肝臓で合成され血中に多量に存在する補体C3が生体防御のキーファクターであることが確立されている。一方で、最近になり、血中でなく、組織中の局所に存在する補体C3が様々な病態や生命現象で重要な役割を担うことが明らかとなりつつある。しかしながら、腫瘍微小環境における補体C3の役割は依然不明である。本研究の目的は、血中を循環するC3ではなく、腫瘍微小環境の”局所”に存在する補体C3の意義を明らかにすることである。
|
研究実績の概要 |
がん微小環境において、正常線維芽細胞あるいはこれに近い状態のがん関連線維芽細胞(CAF)が補体C3を発現するが、その意義は不明である。この正常線維芽細胞あるいはこれに近い状態のCAFにおける補体C3を欠損するマウス(以下、線維芽細胞特異的補体C3欠損マウス)では、抗PD-1抗体の治療効果が減弱することは既に見出していた。その機序として、CD11b陽性ミエロイド細胞の腫瘍内浸潤が減少することも既に見出していた。本申請課題において、具体的にどういった特徴を有するミエロイド系細胞の浸潤が減少しているのかを確認する目的でCITE-seqを実施し、いわゆるM2様腫瘍関連マクロファージが線維芽細胞特異的補体C3欠損マウスで有意に増加していることが確認できた。通常、M2様腫瘍関連マクロファージは腫瘍内で分化・活性化することから、補体C3が欠損した結果もたらされる変化と考え、補体C3の機能はその元となるミエロイド細胞の浸潤阻害と推定した。CD11b陽性の細胞、具体的にはマウス腹腔由来マクロファージ、ヒト由来単球、単球系細胞株THP-1を用いた実験により、補体C3の分解産物であるiC3bが、これらの細胞の遊走を負に制御することを明らかにした。ヒト肺がん検体を用いた病理学的解析においても、CAFにおける補体C3の発現と免疫チェックポイント阻害療法の効果が正に相関すること、およびM2様腫瘍関連マクロファージの浸潤量と負に相関することも見出した。 さらに、CD11b陽性ミエロイド系細胞の浸潤を阻害することが治療法となる可能性を、抗CD11b枯渇抗体およびCD11b部分アゴニストを用いて検証し、これらの薬剤を併用することで抗PD-1抗体の効果が増強することも確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書に記載した範囲の解析はほぼ終えている。 補体C3あるいはその分解産物iC3bがCD11b陽性ミエロイド細胞の挙動制御機序についても、種々の検討から候補も絞り込みできている。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り順調進捗しており、申請書に記載した点である、補体C3あるいはその分解産物iC3bがCD11b陽性ミエロイド細胞の挙動を制御するメカニズムについても、iC3bの受容体の一つである、CR3(CD11b/CD18)下のシグナル伝達系が重要であることは既に見出しており、下流のタンパク質について詳細に検討する。 ヒト病理検体の検討において、補体C3の発現とM2様腫瘍関連マクロファージの浸潤量に負の相関が確認できた一方で、治療効果があった患者のうち、少数例だが、M2様腫瘍腫瘍関連マクロファージが組織内に豊富に認められるものもいた。申請書には記載していないが、治療効果があったもののうち、M2様腫瘍腫瘍関連マクロファージが少なかった(仮説通り)症例と多かった症例を2例ずつ単一細胞解析を実施し、その理由について検討も実施する。
|