研究課題
若手研究
悪性中皮腫は予後が悪く治療の難しい疾患の一つである。悪性中皮腫でS100A16タンパク質の発現が上昇していることを我々は見出しており、本研究ではS100A16の病態進行への関与について解明する。我々の独自研究より、細胞内でS100A16に結合する新規タンパク質を同定しており、本重要知見を基盤に、悪性中皮腫の増殖・転移におけるタンパク質相互作用の意義やメカニズム解明に取り組む。本研究成果は、これら相互作用を遮断する新しい抗がん薬の「創薬」研究への発展が期待される。
悪性中皮腫は、予後が極めて悪い難治性がんであり、分子学的な病態メカニズムの解明に基づく有効な治療法の確立が望まれている。我々の独自研究からS100A16が悪性中皮腫で過剰発現していることを見出し、S100A16の細胞内での新しい結合タンパク質TRPV2(Ca2+チャネルの1つ)を同定することに成功した。この発見に基づき、悪性中皮腫の進展におけるS100A16-TRPV2相互作用の意義を解明するべく研究を行っている。当該年度は、前述の相互作用が病態にもたらす影響を主に分子レベル・培養細胞レベルで検討した。S100A16-TRPV2相互作用は細胞の増殖・走化性・カルシウム取り込みを亢進させた。さらに、それら相互作用に重要なTRPV2のチロシン部位と、そのリン酸化を担うリン酸化酵素を同定することに成功した。現在、これらのリン酸化酵素領域を不活化したコンストラクトを作成しており、TRPV2のリン酸化の状態がどのように変動するか検討し、また対応する阻害剤などを用いてデータの裏付けを詳細にとっていきたい。動物実験も並行して進めており、S100A16とTRPV2を過剰に発現させた細胞をマウスの皮下に移植したところ、腫瘍の増殖が顕著に促進した。今後は、胸腔内移植や転移モデルを用いて評価していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画がうまく進捗し期待通りの成果を得ることができた。
本年度は、S100A16-TRPV2の相互作用に重要なTRPV2のチロシン部位と、そのリン酸化を担うリン酸化酵素を同定することに成功した。次年度では、これらのリン酸化酵素領域を不活化したコンストラクトや阻害剤を用いて得られたデータの信憑性を確認していく。また、in vitroの成果がin vivoに反映されるかどうかについて、マウス由来悪性中皮腫細胞AB-1の同種移植マウスモデルにて検証する。具体的には、胸腔内投与による内腔壁付着増生腫瘍、尾静脈投与による肺転移、について検討するものとする。腫瘍の増大や転移率についてクローンの発光を頼りに定量化するとともに、体重減少とサバイバルカーブを作成する。実験終了時には腫瘍組織を切除し、切片を作成し腫瘍の状態について病理解析する。さらに、TRPV2阻害剤が腫瘍の増殖抑制に有効かどうかを検討する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (16件)
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