研究課題/領域番号 |
23K14608
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
木下 英幸 千葉県がんセンター(研究所), 整形外科, 医長 (50797115)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 骨・軟部肉腫 / レドックス制御 / 酸化還元機構 / オーラノフィン (AUR) / セレコキシブ / PDXモデル / 酸化ストレス / 遠隔転移 / 化学療法抵抗性 |
研究開始時の研究の概要 |
骨・軟部肉腫は希少がんであり,組織型も多岐に渡ることから,新規治療薬が開発されにくい.また骨・軟部肉腫の広範な組織型における病態解明や網羅的発現解析の報告は限られている.本研究の目的はヒト肉腫手術検体を用いた網羅的発現解析により,腫瘍進展に関するレドックス(酸化還元)関連新規治療標的分子を同定すること,同時に種々の肉腫におけるレドックス制御の病態解明と阻害剤の効果を検証することである.本研究により,遠隔転移や化学療法抵抗性に関するレドックスシグナル伝達および標的分子の同定が可能となる.またレドックス関連阻害剤は安全性の高い既存薬でありドラッグリポジショニングにて早期治療薬開発も期待できる.
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研究実績の概要 |
骨・軟部肉腫の研究を進めるために、まずは様々な肉腫モデルマウスの作成を試みた。すなわち、ヒトにおける肉腫の病態に近いPatient-derived xenograft (PDX)モデルを網羅的に作成した。生検時と手術時の種々の肉腫組織をヌードマウスに移植し、これまでに約10株のPDX作成に成功した。それらPDXのうち、まずは横紋筋肉腫PDXマウスを用いて、腫瘍進展におけるレドックス(酸化還元)制御機構の関与を検討した。横紋筋肉腫PDXマウスに対し、コントロール群とオーラノフィン (AUR)群の2群に分け、薬剤を腹腔内投与し、経時的な腫瘍のサイズと摘出時の腫瘍重量を評価した。また免疫染色にて酸化ストレスの関与と腫瘍の悪性度を示すマーカーの評価を行なった。AUR群ではコントロール群と比較し、経時的に腫瘍のサイズを抑制し、摘出時の腫瘍重量も有意に小さかった。またAURは腫瘍内で酸化ストレスを誘導し、悪性度マーカーの割合も低下させ、かつアポトーシスを誘導していた。上記の実験と並行して、滑膜肉腫の腫瘍進展におけるレドックス制御の関与も検討した。本検討では、AURとともに酸化ストレスに関与することが報告されているセレコキシブ (CE)についても注目した。ヒト滑膜肉腫細胞株をヌードマウスに移植し、コントロール群、AUR群、AUR/CE併用群の3群に分け、腫瘍サイズについて検討した。AUR群では経時的に腫瘍のサイズを抑制し、摘出時の腫瘍重量も有意に小さかった。さらにAUR/CE併用群では相乗的に腫瘍を縮小した。また、様々なヒト肉腫手術検体を用いて、次世代シーケンサーを使用して網羅的検討も行っており、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに複数のPDXモデルの作成に成功し、それらを用いた実験系も確立できており、様々なPDXモデルにおけるレドックス制御の解析を進め、論文も複数執筆できた。研究開始時の想定よりも順調に進んでいる。ただ、次世代シーケンサーを用いたヒト肉腫手術検体の解析はまだ評価ができておらず、これに関してはやや遅れている。これらのことから全体的にはおおむね順調だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も様々な骨・軟部肉腫のPDXモデル作成を継続する。また作成に成功したPDXモデルマウスを用いて、レドックス関連阻害剤の効果を随時検討する。次世代シーケンサーの評価においては原発巣と転移巣、化学療法抵抗性の有無、肉腫患者の正常組織と腫瘍組織を比較し、関連するシグナル経路や標的分子を同定する。新規同定された分子に注目し、その阻害剤について作成したPDXモデルを用いて、評価していく予定である。
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