研究課題/領域番号 |
23K14650
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
宮谷 幸造 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (30758173)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | エクソソーム / miR-493 / 胃癌腹膜播種 / パクリタキセル / 腹腔内化学療法 / MAD2 / exosome / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
切除不能・再発胃癌に対する標準治療は、抗癌剤の内服・血管内投与による全身化学療法で、その治療成績は新規抗癌剤の開発により改善傾向にあるものの、腹膜播種を有する患者の治療成績は依然芳しくない。その状況下、胃癌腹膜播種患者に特化した新たな治療法として、パクリタキセルを用いた腹腔内化学療法が比較的良好な治療成績を示し、注目されている。一方で、当該治療のバイオマーカーや耐性化機構の研究は進んでいない。そこで、当該治療中の患者腹水中exosome内包microRNAの発現変動と治療効果の解析から、治療抵抗性に関与する候補microRNAと標的遺伝子を同定、それらの関連機構を精査し、治療成績向上を目指す。
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研究実績の概要 |
胃癌において最も多い転移再発様式である腹膜播種を有する症例に対する標準療法は、抗癌剤を血管内に投与する全身化学療法であるが、その治療成績は未だ不十分である。このような状況下、同症例に対する新規の治療法として、抗癌剤を直接腹腔内に投与する腹腔内化学療法(IP療法)が開発され、一定の良好な治療成績が示され、胃癌腹膜播種症例に特化した治療法として注目されている。そこで本研究は、「胃癌腹膜播種症例に対するパクリタキセル(PTX)を用いたIP療法の治療抵抗性獲得に、患者腹水由来exosome内包microRNA(Exo-miRNA)が関わる分子機構を明らかとする」ことを目的として、研究を開始した。 令和5年度の研究進捗により確認できたことを以下に示す。 ①当科が保有する胃癌細胞株6株(MKN1, MKN28, MKN45, MKN74, KATOⅢ, 85As2)からtotal RNAを抽出してcDNAを調整し、miR-493発現をqPCRにて定量解析したところ、MKN45において最も高いmiR-493発現を認めた。 ②予備実験として行った、IP療法が奏功した症例と奏功しなかった症例での腹水Exo-miRNA発現の網羅的解析では、奏功しなかった症例において、miR-99a・miR-193a-5pの発現低下と、miR-362-5p・miR-493・miR-500・miR-523の発現上昇を認めていたが、これら6つのExo-miRをqPCRにて改めて定量解析・比較したところ、miR-493のみ、網羅的解析と同様の結果が得られた。 ③以降のPTXに対する薬剤感受性試験に使用するために、MKN45細胞株を親株とした、PTX耐性株を作成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①qPCRによるmiR-493発現の定量解析により、当科が保有する胃癌細胞株6株(MKN1, MKN28, MKN45, MKN74, KATOⅢ, 85As2)のうち、MKN45でmiR-493発現が最も高いことがわかり、以降の細胞実験に利用する細胞株として、MKN45が最も適していることが明らかとなったため。 ②予備実験として行った、IP療法が奏功した症例と奏功しなかった症例での腹水Exo-miRNA発現の網羅的解析では、奏功しなかった症例において、miR-99a・miR-193a-5pの発現低下と、miR-362-5p・miR-493・miR-500・miR-523の発現上昇を認めていたが、これら6つのExo-miRをqPCRにて改めて定量解析・比較したところ、miR-493のみ、網羅的解析と同様の結果が得られた。この結果から、miR-493こそ、精査に値するExo-miRNAであることが明らかとなったため。 ③以降のPTXに対する薬剤感受性試験に使用するために、MKN45細胞株を親株とした、PTX耐性株を作成することができた。これにより、今後のRNA干渉実験により、薬剤感受性の精査が可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究の推進方策を以下に示す。 ①腹水より抽出したエクソソームが、実際に細胞株に取り込まれることを、蛍光標識を用いた蛍光顕微鏡で確認する。 ②IP療法が奏功した症例の腹水エクソソームと、奏功しなかった症例の腹水エクソソームをそれぞれ取り込ませた細胞株間で、PTXに対する感受性の違いを比較する(奏功しなかった症例の腹水エクソソームを取り込ませた細胞株でPTXに対する耐性を示すことを確認する)。 ③MKN45の、親株とPTX耐性株におけるmiR-493とMAD2発現を、qPCRとウエスタンブロット法で比較する(PTX耐性株で、miR-493発現が高く、MAD2発現が低いことを確認する)。 ④可能であれば、MKN45の、親株とPTX耐性株に対して、miR-493・MAD2発現のRNA干渉実験を行う。
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