研究課題/領域番号 |
23K14652
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小松 利広 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (90598517)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 血管内皮細胞 / 抗原提示 / 腫瘍 / 制御性T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、血管内皮細胞が特異的にMHC class II分子を欠損するコンディショナルノックアウトマウスおよびin vivoイメージングシステムを用いて、腫瘍抗原特異的な制御性T細胞の腫瘍内浸潤における腫瘍内血管内皮細胞発現MHC class II分子の関与を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、免疫応答を制御する制御性T細胞(Treg)が抗原特異的に腫瘍内へ浸潤するかどうかを調べることを目的としている。まず卵白アルブミン(OVA)を腫瘍抗原と見立て、OVAを発現しないT lymphoma(EL4)およびOVAを発現するT lymphoma(EG7)をマウスに移植する同種移植マウスモデルで実験を行った。マウスには野生型マウスおよび血管内腔の第一層を構成する血管内皮細胞でのみ主要組織適合遺伝子複合体(MHC)class II分子を欠損するコンディショナルノックアウトマウス(MHC-IIΔEC)を用いた。これら担癌マウスにin vitroで活性化させたルシフェラーゼ発現OVA特異的Tregを尾静脈投与により養子移入し、in vivoイメージングシステムを用いてTregの動態を調べた。その結果、野生型マウスにおいてはOVAを発現するEG7のみにTregが浸潤することがわかった。一方、MHC-IIΔECマウスにおいてはEL4、EG7共にTregの浸潤は観察されなかった。したがって、Tregは腫瘍血管内皮細胞上に発現するMHC class II分子に提示されたOVAペプチドを認識することで腫瘍内に浸潤している可能性が示唆された。またマウス前立腺癌細胞株であるTRAMPを用いて同様の実験を行ったところ、少なくとも初期のTregの腫瘍内浸潤促進において腫瘍血管内皮細胞上のMHC class II分子の関与が示唆された。これまでの実験結果から血管内皮細胞におけるMHC class II分子発現は、Tregの組織内浸潤を促進する道しるべとなっている可能性が示唆される。この結果は当初の予想通りであり、血管内皮細胞のMHC class II分子発現を制御することで多くの疾患制御が可能となるかもしれない。また病態の理解や治療法の開発につながる可能性を秘めた研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験から、Tregの抗原特異的な腫瘍内浸潤促進において腫瘍血管内皮細胞による抗原提示の関与を示唆する結果が得られている。この実験結果は本研究課題でまさに明らかにしようと考えていた目的であり、研究は順調に進展していると言える。現在、腫瘍内におけるTregやその他免疫細胞の局在を調べる実験、Treg存在下における細胞傷害性T細胞(CTL)の抗腫瘍効果について調べる実験等を実施している。当初予定していたタイムスケジュールと同程度の進行具合であるため、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Treg存在下における細胞傷害性T細胞(CTL)の抗腫瘍効果について調べる実験を進行中である。腫瘍血管内皮細胞上にMHC class II分子が発現している場合、腫瘍特異的CTLの抗腫瘍効果が抑制されるのに対し、MHC class II分子が発現していない場合、抗腫瘍効果は抑制されないことが明らかになりつつある。したがって、Tregは腫瘍血管内皮細胞とMHC class II分子を介して相互作用し、腫瘍特異的CTLの抗腫瘍効果を抑制している可能性がある。今後はその抑制メカニズムを明らかにしていきたい。
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