研究課題/領域番号 |
23K14697
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
間所 佑太 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40865250)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | HCNP / コリン作動性神経 / アルツハイマー病 / アミロイドβ / アルツハイマー型認知症 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)では,海馬機能を高め神経保護作用も有するコリン作動性神経(CN)が早期に変性する.申請者は,CN機能を賦活するペプチド ”HCNP” に着目し,HCNP遺伝子欠損マウスでは,海馬CNの軸索終末および神経活動の減少をきたすこと,HCNPの脳室内投与によりこれらが救済できることを発見した.本申請では,ADモデルマウスにHCNPを投与し,CNの賦活,生存維持を介して認知機能障害の改善を認めるかを検証する.本研究により,HCNPを基盤としたADの新たな創薬開発への展開が期待される.
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研究実績の概要 |
本研究で用いるAPP-KIマウス(アミロイドβ(Aβ)がたくさん蓄積するアルツハイマー病モデルマウス)の基本profileを調べるために,①APP-KIマウスの海馬でtheta oscillation(コリン作動性神系の機能を反映)を測定したところ,Controlマウスと比較して有意にtheta oscillationが減弱していた.また,このマウスでHCNPをノックアウトすると,さらにtheta oscillationが減弱していることが確認された.このことから,HCNPはAβによるコリン作動性神経障害に抵抗性を示す可能性が示唆された.また,このマウスでのAβの蓄積状態を見るために,western blot法と免疫染色法でAβ40, Aβ42の量を確認したところ,APP-KIマウスではControlマウスと比較してAβ40, Aβ42の量は増加していた(文献通りの結果であることを確認した).このマウスでHCNPをノックアウトしても,Aβの量は変わりなかった.HCNPはコリン作動性神経の賦活を介してAβのクリアランスを向上させる働きが期待されたが,これらの実験結果から,その作用をもつ可能性は低いことが示唆された. HCNPを基盤とするアルツハイマー病治療の開発を考える上で,人の脳脊髄液におけるHCNPの挙動は重要な意味をもつ.今年,史上初めて抗Aβ抗体(レカネマブ)がアルツハイマー病患者に対して承認され,本邦で使用が開始された.我々の研究室では,認知症精査入院を行っており,レカネマブ投与の適否の判断に脳脊髄液を採取するため,本研究ではこの脳脊髄液を一部用いる方針とし,倫理審査委員会に書類を申請した.現在,複数回のやり取りを経て,審査結果待ちである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
APP-KIマウスの基本プロファイルとHCNPの有無による変化ついて,概ねスクリーニングが終了し,本マウスが本研究で使用するのに妥当であることを確認できた. APP-KIマウスの海馬錐体細胞の発火パターンを解析するために,二光子顕微鏡とGRINレンズを組み合わせ,AAV1-CaMKII-GCaMP6fを用いて海馬錐体細胞の神経活動を観察する実験を予定しており,予備実験を重ねているが,神経細胞の発火パターンはマウスの状態(安静時か麻酔下か,課題遂行時かどうか,など)に大きく左右されることがわかったため,どのような条件が妥当か,検証中である.そのため,この実験系において遅れが生じている. 人の脳脊髄液を用いる研究では,倫理審査委員会においてさまざまな審査が必要であり,研究開始の許可が降りるまでに予想外に時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
二光子顕微鏡とGRINレンズを用いた海馬錐体細胞の発火パターン解析のための条件設定を確認していく.この条件が固まり次第,APP-KIマウスの脳室に実際にHCNPを投与し,行動学実験や電気生理学的解析,生化学的解析,組織学的解析を行っていく.また,人の脳脊髄液における研究についても,倫理審査委員会の承認がおり次第,行っていく.
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