研究課題/領域番号 |
23K14716
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
前田 沙梨恵 熊本大学, 病院, 医員 (30836234)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | マクロファージ増殖 / インスリン抵抗性 / 肝線維化 |
研究開始時の研究の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の肝線維症への進行は加齢により増強すると報告され、肝線維化への肝内マクロファージ(MΦ)の関与が示唆されている。過去に申請者らはMΦ特異的増殖抑制マウス(mac-p27Tg)を作成し、10週間高脂肪食(HFD)負荷を行い、MΦ増殖抑制によるインスリン抵抗性の改善、及び肝臓の脂肪蓄積や線維化の進行抑制を報告した。しかしこれは短期的な評価であり、長期的な効果は未だ不明である。本研究では50週と長期にHFDを負荷した加齢モデルマウスの肝臓におけるMΦの増殖を評価すると共に、長期HFD負荷mac-p27Tgのインスリン抵抗性及び肝臓の線維化について解析する。
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研究実績の概要 |
今回の研究ではマクロファージ(MΦ)特異的増殖抑制マウス(mac-p27Tg)に長期間高脂肪食(HFD)を負荷し、NAFLDの進行した加齢モデルを観察することで、肝線維化におけるMΦ増殖の意義を検討した。mac-p27TgマウスとWild typeマウス:WT(対照群)に8週齢よりHFDを負荷し、20週齢と60週齢における耐糖能、肝脂肪症及び肝線維化の評価を行った。 ①体重、空腹時・随時血糖、摂餌量においてmac-p27TgとWT群間で有意差はなかったが、経腹腔糖負荷試験及び経腹腔ピルビン酸負荷試験において、mac-p27Tg群では対照群に比し20週齢、60週齢共に有意な改善を認めた。一方インスリン抵抗性試験では改善傾向はあるものの有意差を認めなかった。 ②肝臓におけるMΦ数を免疫染色(Iba-1陽性面積、Hepatic Crown Like Structure形成)やmRNA(F4/80)で評価したところ、20週齢に比べ60週齢にてMΦ数は有意に増加したが、mac-p27Tg群では対照群に比し増加が有意に抑制されていた。またMΦの細胞周期をフローサイトメトリーで測定すると、20、60週齢共にmac-p27Tg群でS/G2/M cellの割合が有意に減少しており、MΦ増殖抑制を確認できた。 ③脂肪肝及び肝線維化の評価目的で肝をHE染色にて観察した結果、NAFLD Activity Score(3未満はNon-NASH、3-4がBorderline、5以上がNASH)はmac-p27Tg群の方が対照群に比し有意に低値であり、脂肪蓄積もmac-p27Tg群で有意に減少していた。また肝線維化をSirius Red染色で評価すると、線維化面積の割合は20週齢に比べ60週齢で増加するが、mac-p27Tg群の方が有意に抑制されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの実験を施行し結果が出ている一方で、未だ必要個体数が確保できておらず、実行できていない実験もある。
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今後の研究の推進方策 |
① 長期高脂肪食負荷マウスにおけるインスリン抵抗性の評価については、今後mac-p27Tg及び対照群マウスに対しグルコースクランプを施行し、glucose infusion rate、Rate of glucose disappearance、hepatic glucose productionを測定することで、全身のインスリン抵抗性のみならず、肝臓での糖産生や骨格筋の糖取り込みといった各臓器におけるインスリン抵抗性の詳細についても評価する。 ② MΦ増殖抑制マウスの肝臓における慢性炎症評価のため、炎症マーカー(IL-1β、MCP-1、TNF-α、IL-6)のmRNA発現を測定する。また酸化ストレス評価のためp22phox、p47phox、p67phox)のmRNA発現も測定する。 ③ 慢性肝障害は病因によって肝細胞障害や線維化の発症部位が大きく異なるとされており、ウイルス性肝炎では門脈域を中心に免疫細胞の浸潤や線維化が起こる一方、NAFLDでは中心静脈域を中心に脂肪蓄積や線維化が生じると報告されている。門脈域と中心静脈域での浸潤MΦ・Kupffer細胞の増殖による数や極性の変化が、糖新生や肝線維化、中性脂肪合成に影響している可能性を考え、肝臓を門脈周囲及び中心静脈周囲の区域に分け、Laser Micro Diesectionで組織を回収し、各々の区域におけるMΦや炎症、酸化ストレスなどの発現を比較検討する。
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