研究課題/領域番号 |
23K14743
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
今井 一男 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10816606)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 唾液 / ナノポアシーケンサー / メタゲノム / Mpox / ウイルス / 診断 |
研究開始時の研究の概要 |
死亡率の高い呼吸器ウイルス感染症への対策が急務である。本研究では、持ち運び可能・リアルタイム解析が可能なナノポアシーケンサーと、採取容易な非侵襲的検体である唾液を活用することで、日常臨床に応用可能な呼吸器ウイルス診断ツールの開発と、その臨床応用を目指す。本研究の成果により、ウイルス網羅的検出法の臨床応用が加速し、感染症診療の向上と、感染症アウトブレイク対策の立案につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
本年度においては、唾液検体に各種呼吸器病原体ウイルスの核酸を混合し作成した、疑似サンプルを用いて、ナノポアシーケンサーを用いたメタゲノム解析によるウイルス同定について基礎的検証を行うとともに、実際の唾液臨床検体を用いた事前検証を行った。 疑似サンプルにおいては、(1)RNAを抽出した後に、sequence-independent single primer amplification(SISPA法)によりRNAウイルス由来の遺伝子を増幅したサンプル、(2)DNA抽出をし、DNAウイルス由来の遺伝子を含んだサンプル、上記2種類のサンプルをナノポアシーケンサーを用いてメタゲノム解析を実施した。その結果、上記の手法を使用することで唾液検体からRNAおよびDNAウイルスの検出が問題なく可能であることを確認した。 次に、梅毒疑い患者から得られた唾液検体を用いて、梅毒以外の混合感染を解析することを目的に、ナノポアシーケンサーを用いたメタゲノム解析を行った。得られたデータを解析したところ、2023年4月に梅毒疑いで受診・検査が行われた1名の患者よりMpox virus(Monkeypox virus)由来のリードを得た。この患者については、臨床的にMpoxは疑われておらず、見逃されたMpox患者であった。次に、リードをMpox virusのゲノムにマッピングし、患者に感染したMpox virusのゲノム解析を試みたが、リード量が少なくゲノム解析を行うことはできなかった。この結果を元に、国内でMpoxが流行した2023年から2024年にかけて都内クリニックを受診した、梅毒疑い患者84名から得られた唾液検体を用いて、リアルタイムPCR法によるMpox遺伝子の検出を試みた結果、臨床的に見逃されていたMpox患者は、前述した1名の患者のみであることが明らかとなった。唾液とナノポシーケンサーを用いたメタゲノム解析が、臨床的に見逃されていたウイルス感染症患者の発見につながり、後向視的な調査に有用であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検体処理の手法および得られたデータの解析手法についての基礎的検証は終了している。唾液臨床検体を用いた検証については、梅毒疑い患者から得られた唾液検体を用いて検証を行い、ナノポアシーケンサーを用いたメタゲノム解析により、感染ウイルスが検出可能であることを確認しているが、呼吸器ウイルス検体の検体収集・解析については遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
呼吸器病原体ウイルスに感染した患者から唾液検体の収集を継続するとともに、ナノポアシーケンサーとメタゲノム解析を用いて、呼吸器病原体ウイルスの診断とゲノム解析を用いた疫学調査について検証を進めていく。
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