研究課題/領域番号 |
23K14822
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
永田 青海 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (70829449)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 有棘赤血球舞踏病 / ミトコンドリア / フェロトーシス / chorein |
研究開始時の研究の概要 |
有棘赤血球舞踏病(以下ChAc)は、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性の神経変性疾患であり、末梢血の有棘赤血球症に加え、舞踏運動などの運動症状や、種々の精神神経症状や認知機能障害を呈する。原因遺伝子VPS13Aの遺伝子産物choreinはChAc患者全例においてほぼ欠如している。当教室ではChAcモデルマウスの雄性不妊と精子ミトコンドリアの超微細構造異常を見出した。本研究の目的は、解析系として神経系よりシンプルな精子におけるchorein欠如、ミトコンドリアの構造異常、および精子無力症の関連性を解明し、ミトコンドリアにおけるchoreinの機能を解明し、精神症状との関連をつきとめることである。
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研究実績の概要 |
以前我々は、choreinが欠損した有棘赤血球舞踏病(ChAc)モデルマウスにおける精子のミトコンドリア超微細構造異常と、精子無力症による雄性不妊を発見した。今回の研究はその分子的メカニズムの解明を目的とする。睾丸の電子顕微鏡観察ではChAcモデルマウスの精子形成過程後期にミトコンドリアに超微細構造の異常が出現した。また脂質過酸化を意味するマロンジアルデヒト染色がChAcモデルマウス精子形成過程最終期で陽性であった。細胞研究で、choreinノックダウン細胞に脂質過酸化を示すフェロトーシス亢進を認めたことから、精子形成過程後期におけるフェロトーシス亢進が示唆された。また、ChAcモデルマウス精子では遠心操作で細胞質滴の分離を認め、細胞膜脂質の不安定性が示唆された。 ChAcモデルマウス精子のウエスタンブロットでは、ミトコンドリア外膜に局在してタンパク質の内部輸送に関与するTOM20の免疫反応増加と、ミトコンドリア内に局在するIDH3A及びACAT1の免疫反応低下を認めた。choreinが免疫沈降法でIDH3AやACAT1と共沈したことから、choreinは、精子形成過程でIDH3AやACAT1のミトコンドリア内輸送に関与し、chorein欠損により代償的にTOM20が増加した可能性が示唆された。 メタボローム解析では、ChAcモデルマウス精子で解糖系およびTCAサイクルの代謝物の増加を認め、ミトコンドリア疾患患者とその動物モデルで一般的に報告されているメタボロームプロファイルと一致したことから、ChAcのミトコンドリア代謝障害が示唆された。 以上の結果から、choreinが精子形成後期の抗フェロトーシスおよびミトコンドリア形態の成熟に関与し、その欠如が精子細胞膜脆弱性、ミトコンドリア機能障害、不安定なTCAサイクルなどと関連し、精子無力症に至ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記した実験結果をまとめ、以下の論文を共同著者として発表した。 Arai K, Nishizawa Y, Nagata O, Sakimoto H, Sasaki N, Sano A, Nakamura M. The Role of Chorein Deficiency in Late Spermatogenesis. Biomedicines. 2024 Jan 22;12(1):240. doi: 10.3390/biomedicines12010240. PMID: 38275411; PMCID: PMC10813020.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、有棘赤血球舞踏病モデルマウスを用いた実験を進め、chorein欠損を発端とした細胞膜の不安定性、エネルギー代謝系の異常、ミトコンドリアの機能異常、精子無力症について、分子的機序の解明を進めていく。
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