研究課題/領域番号 |
23K14882
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
池沼 宏 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 認知症先進医療開発センター, 研究技術員 (10751159)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | PETイメージング / FFAR1 / PET / GPR40 |
研究開始時の研究の概要 |
Free Fatty Acid Receptor 1(FFAR1)はヒトの膵臓と脳に高発現する遊離脂肪酸受容体の一つであり、その作動薬は、膵臓のβ細胞からグルコース依存的にインスリン分泌を促進させるⅡ型糖尿病治療薬となりうる。また、FFAR1作動薬は神経炎症抑制や神経細胞新生を誘導することからアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療薬となりうる。本研究はFFAR1作動薬の構造をもとに、FFAR1発現量変化とこれらの病態進行の関係解明やFFAR1刺激を作用機序とする治療薬開発を加速させる、膵臓β細胞と脳内のFFAR1をin vivoで画像化するPETプローブの創製・評価を目的とする。
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研究実績の概要 |
Free Fatty Acid Receptor 1(FFAR1)はヒトの膵臓と脳に高発現する遊離脂肪酸受容体の一つであり、その作動薬は、膵臓のβ細胞からグルコース依存的にインスリン分泌を促進させることから低血糖を伴わないⅡ型糖尿病治療薬の候補として注目されている。FFAR1発現量は、Ⅱ型糖尿病モデルマウスおよびⅡ型糖尿病患者における膵臓β細胞で低下していることが報告されており、Ⅱ型糖尿病患者における膵臓β細胞のFFAR1発現量の経時変化を捉えることができれば、Ⅱ型糖尿病の病態進行のメカニズムの更なる解明に繋がることが期待できる。 短寿命放射性核種(11C、18Fなど)で標識した分子プローブの投与により生体内でプローブの動態を測定できる陽電子断層撮像法(PET)は、生体への繰り返し撮像が可能であり、FFAR1をイメージングするPETプローブはFFAR1発現量の経時変化を捉える可能性がある。さらに、FFAR1作動薬は神経炎症抑制や神経細胞新生を誘導することから神経脱落を伴うアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療薬となる可能性がある。しかしながら、FFAR1への特異的結合と脳内移行性を有し、FFAR1刺激を作用機序とした治療薬の開発を加速させるPETプローブの開発は十分ではない。本研究では、FFAR1作動薬の化学構造をもとに、膵臓β細胞領域 と脳内に高発現するFFAR1を画像化できるPETプローブを創製し、小動物PETイメージングや血漿、膵臓、脳中放射性代謝物分析、オートラジオグラフィによりPETプローブの機能評価を目的とする。 本年度は、FFAR1を標的としたPETプローブの標識用前駆体の合成に着手した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、FFAR1作動薬の化学構造にもとづき、独自の高速C-[11C]メチル化反応の適用により11C標識化されるPETプローブを設計・合成し、その機能評価を目的とする。計画した3工程の標識前駆体合成において、ビルディングブロックのシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元的アミノ化反応、続くアミノ基の無水トリフルオロ酢酸による保護反応はともに90%の収率で進行した。しかしながら、標識用前駆体合成の最終工程のブロモベンゼン構造部位での金属化(ピナコールボロン酸エステルあるいはトリブチルスズの置換)反応の収率が極めて低く、目的とする標識用前駆体が得られていない。そのため、初年度の計画であった標識用前駆体の合成、この標識用前駆体を用いて、非放射性ヨウ化メチルによる非放射性条件での高速メチル化反応の合成検討が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
20分という短い半減期を有する11Cを用いた標識化合成は、遮蔽された自動合成装置内で製剤化まで2~3半減期以内の時間で合成する必要がある。標識化の標的とするFFAR1作動薬は第2級アミノ基を含有することから、パラジウム 0価錯体が介在する高速C-メチル化反応を適用した11C標識化合成ではFFAR1作動薬標識用前駆体のアミノ基の保護脱保護が欠かせない。まず、アミノ基の保護基として塩基性条件で素早く脱保護されるトリフルオロアセチル基を選択したが、この不安体さにより、標識用前駆体合成の最終工程とした金属化(ピナコールボロン酸エステルあるいはトリブチルスズの置換)が低収率であったと考えられ、短時間で容易に脱保護できる適切な安定性を有する保護基の導入を検討する。また、金属化反応の収率が低いもう一つの原因として、金属化位置がオルト位であり、合成の終盤での立体障害によると考えられ、標識用前駆体合成の初期段階で金属化を行う工程を再設計する。標識前駆体が合成されれば、これを用いた標識反応の条件検討は、実際の標識反応に近似した条件のもとで非放射化ヨウ化メチルを用いて実施し、見出された最適な反応条件にて実際の11Cヨウ化メチルを用いて標識合成を検討する。つづけてPETプローブの製剤化への検討、小動物PETイメージング、血漿、膵臓、脳中放射性代謝物分析、オートラジオグラフィを実施し、PETプローブの機能評価を実施する。
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