研究課題/領域番号 |
23K14902
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
名川 恵太 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10966211)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 変形性関節症 / MRI mapping / texture解析 / 機械・深層学習 |
研究開始時の研究の概要 |
変形性関節症の初期の病態として関節負荷に伴う組織の損傷と構造変化があり、この画像化・定量化の手法にMRI mappingやtexture解析が知られている。本研究ではまず20~40歳代の健常者において、運動・体位保持の前後で膝MRI T1rho・T2mappingを撮像して関節組織の微細な変化を画像化し、texture解析を用いて画像の高度な定量的評価を行う。また過去の膝MRI症例を集めてOAに関わる特徴量を選び出し、両者の結果を対比する事で関節負荷に伴う変化とOAとの関連性を探る。選ばれたtexture特徴量と機械・深層学習を併せ、OAの早期診断モデルの構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
変形性関節症(OA)の初期の病態として関節負荷に伴う組織の損傷と構造変化が知られており、本研究課題はMRI mapping技術とtexture解析を用いてこれらを画像化・定量化し、OAとの関連性を探るものである。2023年度は、20~40歳代の健常者を募集し、これまでに9例の被験者の協力を得た。関節組織の微細な変化を捉えるべく、運動・体位保持の前後で膝MRI T1rho・T2mappingを撮像した。撮像されたmapping画像の質は保たれ、評価する上で問題ないと考えている。症例数がまだ少なく、運動・体位保持の前後での定量値の差など統計学的評価が得られていない。また、当施設で過去10年間に撮像された膝関節MRIの症例を検索し、受傷直後や手術後の経過観察などの症例は除外し、「異常なし」~「OA変化あり」に該当する症例をデータベースとした。現段階で「異常なし」が50例程度、「OS変化あり」が400例程度集まっている。これらの症例群についてtexture解析と呼ばれる高度な画像の定量的評価を行い、OAに関係性の高いパラメータ群の抽出を試みている。2023年度は、上記の症例群を収集し、適切な画像が撮られているものを選定した。ITK snapと呼ばれるcontouring toolを用いて軟骨下骨や脂肪体に3D segmentationを行っている。症例数が多く個々の症例にsegmentationを行うのに時間が掛かっている。今後segmentationが完了すれば画像・組織毎のtexture特徴量の抽出を行う。以上のように研究成果・業績は中途の段階であるが、本研究課題の内容や既存報告についてまとめた総説が邦文雑誌に掲載された(名川恵太:変形性関節症の定量的画像評価・解析法について Precision Medicine 2023年10月号, 2024年1月号 北隆館)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は前項にて述べたように、健常被験者における症例の蓄積と過去症例群の解析・検証に時間を要している段階である。前者は2025年度前半までの症例蓄積、また後者は2024年度前半までの解析を見込んでおり、今のところ大幅な遅れはなく進行していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は引き続き健常被験者における症例の蓄積と過去症例群の解析・検証を進めていく予定である。texture解析・統計解析は実装できる環境が既に整っており、解析自体にはそれ程時間を要しない。またMRI mappingやtexture解析以外の評価手法としては形状モデル解析がある。OAの重症度を決定する因子として骨棘の程度が知られており、骨棘の容積を計測することで重症度を予測しようという考え方がある。アプローチの一つとして一般化プロクラステス解析(Generalized Procrustes Analysis [GPA])と呼ばれる3D形状モデル解析を用いた手法が報告されている。プロクラステス解析(手足を伸ばしたり切断したりするギリシャ神話の泥棒に由来)は、一群の形状(構造)について対応する点群を求め、並進・回転・拡大/縮小を用いて同一座標軸上に標準化する手法であり、これにより一連の形状(構造)サンプルの中での平均化したモデルを求めたり、さらに群間比較を行ってその差を定量的に求めたりすることができる。本研究課題の場合、まずOA群においてMRI・CT画像から骨の3D形状モデルを作成し、同様に健常者群についても3D形状モデルを作成し参照モデルとする。健常症例の参照モデル群からGPAにより、平均化した参照モデルを求め、さらに参照モデル群とOA群とについて、プロクラステス距離と呼ばれる非類似度の指標を用いて群間比較を行う。また、参照モデルをOAのモデルに当てはめた時に、差分となるものが突出する構造(骨棘)であり、この骨棘モデルの容積を定量してOAの重症度との相関を調べることができる。この手法もOAの予測・評価において重要な役割を果たす可能性があり、MRI mappingやtexture解析と並行して検討していく予定である。
|