配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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研究実績の概要 |
今年度は、小頭症・皮質形成異常症を伴う知的障害患者から同定されたCdc42の変異体(I21T, Y23C, T43I, Y64C, R66G, R66Q, C81F, S83P, A159V, E171K)のGタンパク質活性とエフェクター結合への影響を生化学的に評価した。Gタンパク質は不活性型のGDP型と活性型のGTP型で構成されており、GDP/GTP交換反応で活性型となり、GTP水解反応により不活性型となることが知られている。各種精製タンパク質の活性測定の結果、I21T, Y23C, Y64C, R66Q, C81F, S83P, A159VはGDP/GTP交換活性が賦活化し、R68Q, S83PはGTP水解活性が低下していることがわかった。すなわち、I21T, Y23C, Y64C, R68Q, C81F, S83P, A159Vは活性型変異であることが判明した。さらに I21T, Y64C, R66Q, C81F, S83Pは、神経細胞の形態制御に重要だと報告されているエフェクターのうち、PAK1とACK1に強く結合することがわかった。これらの結果から、変異によるCdc42→PAK1シグナル、Cdc42→ACK1シグナルの異常な過剰活性化が、細胞の形態異常を引き起こして神経発達を障害するのではないか?、という仮説が立てられた。今後、Cdc42変異体を発現させたマウス病態モデルを用いて神経発生、シナプス形成への影響を観察することで、知的障害発症の病態メカニズムに迫る。
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今後の研究の推進方策 |
Cdc42には脳特異的に発現するスプライシングバリアントCdc42bが知られているため、変異によるCdc42b→PAK1シグナル、Cdc42b→ACK1シグナルの異常な過剰活性化が神経発生を障害するのではないか?という仮説のもと、検証を行う。具体的には、マウス子宮内胎仔脳電気穿孔法を用いてCdc42b変異体を発現させ、各種変異体が神経細胞の増殖・遊走による皮質形成・分化(軸索・樹状突起・シナプス形成)の何れの発達過程を障害するか、を観察する。上記アッセイで強い活性型であることが判明した I21T, Y64C, R66Q, C81F, S83Pを優先し、その病因シグナル候補であるPAK1, ACK1への影響を詳細に調べる。さらに、化合物添加による神経形態異常・ シグナル異常の改善を指標として、治療シーズも探索する予定である。
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