研究課題/領域番号 |
23K14989
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
月田 貴和子 自治医科大学, 医学部, 助教 (50812799)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | SENDA /BPAN / オートファジー / フェリチノファジー / WDR45 / SENDA/BPAN / WDR45/WIPI4 / NCOA4 / 鉄代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
神経変性疾患のSENDAは、オートファジー関連遺伝子WDR45の異常で、脳内に鉄沈着を起こし、知的障害や運動発達遅滞、パーキンソニズムを生じる疾患である。申請者は、患者線維芽細胞において鉄貯蔵蛋白であるフェリチンの分解が障害されることで鉄の利用障害が起こり、細胞傷害に至ることを明らかにした。しかし、中枢神経に限局して症状が出現する機序は未解明で、有効な治療法は確立されていない。本研究では、患者iPS細胞から誘導した神経系の細胞を用いて、中枢神経における病態を解明する。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる遺伝子導入や、スクリーニングした薬剤による表現型の改善を目指す。
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研究実績の概要 |
神経変性疾患SENDA /BPANでは大脳基底核を中心とした脳内に鉄が沈着することが特徴である。これまでに線維芽細胞を用いた実験で、患者細胞ではフェリチン特異的なオートファジーであるフェリチノファジーが障害されることで、細胞内に三価鉄が蓄積することを示した。フェリチノファジーにはNCOA4というアダプタータンパクが必要だが、患者細胞では原因遺伝子WDR45がコードするWIPI4だけでなくNCOA4も減少すること、そして、WDR45の遺伝子導入でWIPI4だけでなくNCOA4のタンパク発現も回復することを示した。 2023年度は上記の現象が線維芽細胞以外でも再現できるかを検証した。そのために、未分化iPS細胞、ヒトの脳、マウス脳でWBを行い、使用可能な抗体を選別した。未分化iPS細胞では患者検体でWIPI4とNCOA4のタンパク発現が著明に減少しており、これは線維芽細胞で得られた結果と一致していた。一方、未分化iPS細胞ではフェリチンに変化はなかった。細胞分裂が盛んなことが原因で蓄積していないと考えられた。 次に神経前駆細胞から神経細胞を分化誘導する手法を検討し、安定して分化させる方法を確立した。神経細胞の観察のため、細胞体と軸索、神経終末を分離するチャンバースライドを活用し、コーティングの方法や適切な播種密度などを検討した。 フェリチン分解を促進する薬剤探索は線維芽細胞で進め、候補薬を4つに絞った。これらの候補薬はいずれも患者線維芽細胞のフェリチンを半分以下に減少させる効果があり、他の表現型を改善させる可能性があると言える。ミトコンドリアの呼吸鎖活性や三価鉄、二価鉄について変化に再現性があるか検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薬剤スクリーニングは順調に進んだ。 神経細胞の表現型の観察に関しては、健常者細胞での条件検討に時間を要したため、患者細胞との比較までは進んでいない。研究計画では令和6年度の上半期までに表現型の評価を達成することとなっているため、引き続き患者細胞の観察に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
患者由来のiPS細胞から分化した神経細胞で、生存率や分化成熟の状態、WIPI4の局在、ミトコンドリアのATP産生能、軸索の形態、オートファジー分解基質の動きや分解について評価する。 昨年度得られたフェリチンを減少させる候補薬を添加した際に、患者細胞の表現型が回復するか評価する。 遺伝子導入と薬剤を併用することの効果を検証する。
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