研究開始時の研究の概要 |
肺動脈性肺高血圧症は原因不明の疾患である.肺の血管に炎症が起こり進行する致死的な病態で,呼吸不全と心筋の機能低下(心筋リモデリング)が主な死因と考えられている.肺移植治療は有効であるが,日本では移植までの平均待機期間が長期間だと報告されている.今回,ヒトの肺動脈性肺高血圧と類似している低酸素ラットモデルに対して,浅原・増田らが開発したQuality-Quantity Cultured Cells (QQ細胞)を投与する.QQ細胞は①患者自らの細胞を使う,②病変部位へ集まり炎症を抑える,③手の届かない臓器に移行して効果を有するなどの特徴があり,安全に病態の進行を抑制し,改善する治療法となり得る.
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研究実績の概要 |
F344ラットを購入し, VEGF receptor blocker(Sugen5416)をF344rラットに投与後, 低酸素暴露3週間行い, 肺高血圧ラットモデル(Sugen/Hx rat model)を作製した.このF344ラットを用いたモデルの病勢・病態について生存期間を含め調査し, 経時的に肺動脈血流および肺組織の変化について評価を行った. まずF344/DuCrlCrlj ラットにSugen5416(20㎎/kg)皮下注後,チャンバーに収容し, 低酸素暴露 (FiO2 0.10 , 3週間)後, 室内気で2週間飼育した. Sugen5416投与後5週間経過した時点で心臓超音波検査を実施し, 肺動脈血流評価を行った. 評価後に心筋および肺組織の病理学的評価を行った.QQ細胞培養については,コントロールラットから採取した血液とSugen/Hx rat modelから採取した血液から実施した,【結果】 Sugen5416投与後5週間の時点で, 肺動脈血流波形にnotch (mid-systolic notch) が出現し, AcT/ET値の低下を認めた. 病理組織ではGrade2の肺血管の閉塞性肺血管病変(重症肺高血圧組織像)を認めていた. また右室心筋の肥厚を認めていた. F344ラットを用いたSugen/Hx rat modelはSugen5416投与後の15週までに全例死亡した. QQ細胞はSugen/Hx rat modelから採取した血液では有効細胞数が得られなかった.【考察】 これまで報告されているSDラットを用いた肺高血圧ラットモデルに比して, F344ラットを用いたSu/Hxモデルは,病態進行が早いことが判明した. 今後はこの急速に進行する病態をQQ細胞でコントロール可能であるか, 投与時期および投与回数を検討し実施する予定である.
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