研究課題/領域番号 |
23K15036
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 智之 金沢大学, 医学系, 助教 (30782065)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肥満外科治療 / E. coli / 肥満 |
研究開始時の研究の概要 |
NASHは肥満と関連するが、個人差が大きく、減量のみでは病態が改善しない症例も多く存在する。そこで申請者は肥満と関連性のある腸内細菌叢が肥満合併症のNASHを増悪させる原因である、という仮説を立て、肥満外科治療前後で腸内細菌叢の変化を経時的に評価・検討した。その結果、治療後の肥満者の便では全腸内細菌中、特にE.coliの割合が減少していたことから、NASHとの関連性に着目した。本研究では、肥満者の便のシーケンシングにて肥満患者から分離したE. coliの遺伝子を解析し、肝の炎症、線維化を起こしうる病原性遺伝子を同定する。腸内細菌に照準を合わせたNASHの治療を開発し、創薬につなげる。
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研究実績の概要 |
研究背景と目的:肥満とその関連疾患における腸内細菌叢の役割は、近年多くの研究で注目されています。特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行に対する腸内細菌の影響が指摘されています。本研究の目的は、肥満患者における腸内細菌叢の変化を治療前後で比較し、その変化がNASHの肝線維化や炎症にどのように影響するかを明らかにすることです。 研究方法:肥満患者を対象に、治療前後の便サンプルを収集し、腸内細菌叢を解析しました。16S rRNAシーケンシングを用いて、各サンプル中の微生物の種類とその相対的な豊富さを評価しました。また、健常者15名からも便サンプルを収集し、肥満患者との比較を行いました。 研究結果1 Escherichia coli (E. coli) の変化:肥満治療前のサンプルにおいて、E. coli の存在が顕著に多いことが確認されました。治療後には全例でE. coli が明らかに減少し、この変化は統計的に有意でした。この結果は、肥満治療が腸内のE. coli の過剰な増殖を抑制する効果を持つことを示しています。 研究結果2 NASHにおける腸内細菌叢の影響:肥満者の持つ病的な腸内細菌がNASHの肝線維化や炎症を増悪させていることが推測されます。治療後の腸内細菌叢の改善により、肝臓の炎症マーカーの減少が観察されました。これにより、腸内細菌叢の調整がNASHの進行抑制に寄与する可能性が示唆されました。 研究結果3 健常者との比較: 健常者の腸内細菌叢と比較した結果、肥満患者の腸内には炎症を引き起こす可能性のある細菌が多く存在し、一方で健常者の腸内には炎症を抑える細菌が豊富であることが明らかになりました。これにより、肥満患者の腸内細菌叢が病的なプロファイルを持つことが確認されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肥満患者の便が、シーケンシングできないものが多く、新規にリクルートが必要であった。 また、健常者の便のリクルートも必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、すぐに肥満者の便のリクルートを継続し、E. coliの株を入手したうえで、全ゲノムシーケンシングで遺伝子配列を決定する。 これらの研究を通じ、肥満者の便中E. coliの遺伝子配列を決定し、肝線維化を起こしうる病原性遺伝子候補を抽出する。またE. coliはセロタイプにより病原性が異なることが知られているので、セロタイプも同定する。 それができれば炎症、脂肪肝、肥満を増悪させるE. coli株を同定、マウスモデルで確認し、Validation cohortにおけるE. coliの関与の確認を行う。
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