研究課題/領域番号 |
23K15050
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中森 裕之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60824349)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 近位結腸 / L細胞 / GLP-1 / 蠕動運動 / ソマトスタチン / D細胞 / LPS / セロトニン / グルカゴン様ペプチド1(GLP-1) / 腸内環境 |
研究開始時の研究の概要 |
腸内環境は腸管運動に直接影響するため、そのセンサーである腸内分泌細胞は重要である。申請者らは、近位結腸において腸内分泌細胞のL細胞が短鎖脂肪酸を感知し、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)を放出して蠕動運動を促進させることを明らかにしている。これまで蠕動運動に関与する腸上皮細胞としてはセロトニンを分泌する腸クロム親和性細胞のみが着目されてきたが、L細胞は腸管運動の生理および病態機能におけるゲームチェンジャーとして期待される。 そこで、L細胞はセロトニンなどによる調節を受けながら、腸内環境の変化に対応して蠕動運動を制御しているとの仮説のもとに、蠕動運動制御機構におけるL細胞の役割を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、近位結腸における腸内分泌L細胞がどのような生理活性物質に調節されながら腸内環境の変化を感知して蠕動運動を制御しているのかを解明することである。 これまでにリポ多糖(LPS)がL細胞を刺激しグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)を介して蠕動運動を促進させていることを明らかにした。この成果をまとめ、現在生理学関連雑誌に論文投稿中である。 D細胞から放出されるソマトスタチンおよび腸クロム親和性細胞から放出されるセロトニンとGLP-1の相互作用について検討した。ソマトスタチン自体には蠕動運動を変化させる効果はなかったが、ソマトスタチンを前投与した結腸標本では、GLP-1の作用が抑制された。一方、ソマトスタチンやGLP-1受容体拮抗薬を前投与した結腸標本においても、セロトニンの蠕動運動促進作用は発揮され、セロトニン受容体拮抗薬はGLP-1の蠕動運動促進作用を阻害しなかった。免疫組織化学的手法により、ソマトスタチンの受容体がL細胞に発現していること、GLP-1受容体がD細胞とソマトスタチン含有求心性神経に発現していることが明らかになった。したがって、D細胞および求心性神経から放出されるソマトスタチンはL細胞からのGLP-1放出を阻害し蠕動運動の亢進を抑える働きがあることが明らかとなった。また、腸クロム親和性細胞は他の腸内分泌細胞とは独立して蠕動運動を制御していることがわかった。 これらソマトスタチン関連の結果を論文にし、投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPS関連の研究がすでにまとまり、論文を投稿し査読者からコメントが返ってきている。現在その追加実験中である。 ソマトスタチン関連の研究も当初の予定よりもデータが揃うまでの期間が短かったため、すでに論文執筆中である。 これらの研究内容は次年度中に公表できると考えられるので、順調に成果が出ているといえる。 ストレスやLeaky gutといった病態モデルを使用した実験も適宜行っており、立ち上げに時間がかかる実験が遂行可能になっている。よって、今後も順調に研究が進展することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
LPS研究の追加実験を早期に完了させて、リバイス論文を投稿する。 ソマトスタチン研究も早期に論文投稿し、今年度中に公表に至るよう努力する。 現在、短鎖脂肪酸やLPS以外の腸内容物について、L細胞を刺激して蠕動運動を促進させないか検討している。新規L細胞刺激物質を見つけ、GLP-1との関連ならびにソマトスタチンやセロトニンとの関連も調べていき、今年度中にデータを揃えて次の論文投稿の準備を進める。
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