研究課題/領域番号 |
23K15055
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田中 玲奈 (佐々木玲奈) 日本大学, 医学部, 研究医員 (10870644)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | microRNA / ウイルス性肝炎 / マイクロRNA / 急性肝炎 |
研究開始時の研究の概要 |
内科的治療のみを実施した急性肝不全の救命率は低く、重症化予測の客観的な基準と予防対策は重要である。急性肝炎重症化機序の詳細については不明な点が多く、重症化因子や治療反応性予測バイオマーカーなど研究すべき点が多い。 本研究では、ウイルス性急性肝不全で有意に変化した肝特異的マイクロRNAを過剰発現または抑制し、サイトカイン遺伝子発現や細胞障害性、細胞内シグナル伝達経路の変化を観察し、マイクロRNAによる肝細胞障害機序を分子レベルで明らかにする。 この研究によって、急性肝炎・急性肝不全のバイオマーカーが確立されることにより、急性肝炎・急性肝不全の重症化予測・予防や重症化例の新規治療法の開発が可能になる。
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研究実績の概要 |
研究代表者は、肝特異的マイクロRNAのPCRアレイを使用し、ウイルス性急性肝炎(非急性肝不全型)とウイルス性急性肝不全患者の血清を比較することで、9つのマイクロRNA(hsa-let-7g-5p, hsa-miR-126-3p, hsa-miR-16-5p, hsa-miR-21-5p, hsa-miR-223-3p, hsa-miR-23a-3p, hsa-miR-30c-5p, hsa-miR-4516, hsa-miR-451a)を見出した。validationを行うために、他施設共同研究とし(各施設の倫理委員会承認済み)、ウイルス性急性肝炎(非急性肝不全型)とウイルス性急性肝不全患者の血清を集めた。それらの血清よりマイクロRNAを抽出し、9つのマイクロRNAについて、RT-qPCRで定量比較を行っている。また、本研究は、validationされたマイクロRNAが肝細胞や周囲の細胞に与える影響を検討することで、肝炎の重症化にどのように寄与しているのかを明らかにするものであるが、in vitroでのウイルス性肝炎モデルや脂肪肝炎モデルを確立しそれらマイクロRNAの発現量の変化を比較することで、マイクロRNAが肝臓に与える影響を予測できる。また、ウイルス性肝炎モデルや脂肪肝炎モデルにマイクロRNAの過剰発現やノックダウンを行うことで、実臨床での肝炎重症化機序に近い検討を行える可能性がある。そのために、肝炎ウイルスを複数の肝癌細胞株に感染させたモデルを作成し、オレイン酸とパルミチン酸を配合したFree Fatty Asid(FFA)を濃度や時間を変えて肝癌細胞株に添加することで、in vitroでのウイルス性肝炎モデルや脂肪肝炎モデルを確立した。これらの肝癌細胞株は、ウイルス量を real-time RT-PCRで確認した。また、肝癌細胞内の脂肪の蓄積をOil Red O染色で検討した。さらに、interleukin-6など炎症反応に関与するサイトカイン遺伝子の発現を real-time RT-PCRやELISAで確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本大学医学部の感染ゲノム研究室の空調の故障(研究室が陽圧となり外に漏れていた)があり、2023年4月から2023年5月下旬ごろまでウイルス感染細胞を使用した実験やウイルス感染患者の血清を使用する研究が出来なかった。また、2024年4月より研究室が日本大学医学部(東京都板橋区)より新潟大学医学部(新潟県中央区)に完全移転したため、2024年2月中旬よりウイルス感染細胞を使用した実験やウイルス感染患者の血清を使用する研究が出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、validationされたマイクロRNAが肝細胞に与える影響を検討する。ヒト肝癌細胞株Huh7細胞に、validationされた急性肝不全関連マイクロRNAをそれぞれ細胞内遺伝子導入し、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性に過剰発現(microRNA mimic)した肝癌細胞株を作成する。肝細胞障害性をMTS assayで検討する。また、肝細胞アポトーシスをcaspase-3と -7をELISAキットで検討する。肝細胞サイトカイン産生は、tumor necrosis factor-α、interleukin-6など炎症反応に関与するサイトカイン遺伝子の発現を real-time RT-PCRで確認する。コントロールにはcontrolマイクロRNA(microRNA mimic control)を同様に細胞内遺伝子導入したHuh7細胞を使用する。またマイクロRNA Hairpin Inhibitorを同様に細胞内遺伝子導入し、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性にノックダウンした肝癌細胞株を作成、同様の検討を行う。ヒト肝癌細胞株はHuh7以外にも、HepG2、Hep3B、HLF等を使用し、同様の検討を行う。次に、これらの肝癌細胞に対しプロテオミクス解析を行いカギとなるタンパク質を見出す。急性肝不全関連マイクロRNAの標的についてはTargetScanHumanを用いたin silico解析も行う。 さらに、急性肝不全関連マイクロRNAを一過性に過剰発現またはノックダウンした肝癌細胞株の上清を、肝星細胞やマクロファージに添加し、肝星細胞やマクロファージのサイトカイン遺伝子発現や細胞毒性を同様に検討することで、急性肝不全関連マイクロRNAの肝細胞障害応答における機能的な役割を検討する。
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