研究課題/領域番号 |
23K15058
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
木島 真理恵 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, 研究員 (70846310)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 肝臓 / MASH (NASH) / 肝星細胞 / 肝線維化 / 細胞死 / NASH |
研究開始時の研究の概要 |
慢性肝炎の本態は、細胞死に伴う炎症反応であり、適切な治療がされない場合、やがて肝線維化が進行し、肝硬変や肝発がんに至るリスクが高まる。肝線維化は、肝臓が傷害を受けて肝星細胞が活性化し、筋線維芽細胞様の細胞に性質を変化させて誘導される。近年、細胞内分子で制御された様々な細胞死様式が次々に発見されており、疾患における役割が注目されている。例えば、フェロトーシスを誘導した肝星細胞では肝線維化が抑制されるが、どの程度の肝星細胞にどのような様式の細胞死を誘導すれば、肝線維化の抑制に最も有効であるかについては不明である。本研究では、特定の細胞死を誘導することが線維化治療となりうることの概念実証を目指す。
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研究実績の概要 |
まず、アポトーシスの実行に抑制的に働く遺伝子Xを肝特異的に欠損 (KO)したマウス (遺伝子X LKOマウス)にMASH(非アルコール性脂肪肝炎)食を与え、遺伝子X KOマウスでは肝細胞でのアポトーシスの亢進とともに極めて早期に肝線維化が進行することを確認した。そして、遺伝子X KOマウスの肝臓を一細胞RNA-seq解析し、静止期の肝星細胞で発現の高い遺伝子Yを見出した。作製した遺伝子Y KOマウスにMASH食を与え、抗Cleaved caspase-3抗体を用いた免疫染色とSirius red染色、qRT-PCRによる線維化関連遺伝子の発現解析をしたが、アポトーシスや肝線維化について有意な差は認められなかった。 次に、肝星細胞特異的に細胞死を誘導するマウスを作製した。フェロトーシスの誘導を試みるべく、遺伝子Y-Creマウスにフェロトーシスの阻害作用を示すGpx4のfloxマウス (Gpx4Flox/Floxマウス)を交配させた。遺伝子Y-CreマウスとGpx4Flox/Floxマウスとの交配マウスに関して、遺伝子YとGpx4の発現解析をqRT-PCRにより行ったが有意な減少が見られなかったため、肝星細胞にのみ発現するLrat遺伝子改変マウスを使用する方法を検討している。 Gpx4Flox/Floxマウスは、アデノ随伴ベクターAAV8-iCreの腹腔内投与によりGpx4の肝特異的KOマウス(Gpx4 LKOマウス)が作製可能である。qRT-PCR による発現解析とTBARSアッセイを行った結果、Gpx4 LKOマウスでは、対照マウスと比べてGpx4の発現量の有意な減少と過酸化脂質の上昇傾向が見られ、フェロトーシスが亢進する傾向にあることがわかった。また、Gpx4 LKOマウスを通常食で飼育すると2週間程で致死となった一方で、MASH食では長期に生存することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず、遺伝子X LKOマウスの肝臓の一細胞RNA-seq解析の結果から、静止期の肝星細胞で発現の高い遺伝子Yを見出しており、遺伝子Y KOマウスの解析を行った。結果として、遺伝子Yは肝線維化等に大きく寄与する因子ではない可能性が見えつつあるが、遺伝子Yの肝臓での機能に関しては不明点が多いため、新たな知見を創出することができたと考えている。さらに、肝星細胞特異的に細胞死を誘導するマウスに関しても作製を進めることができている。また、Gpx4 LKOマウスの解析の結果、フェロトーシスが亢進傾向にあることと、餌と生存に関する知見が明らかになった。以上の結果より、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
肝星細胞特異的に細胞死を誘導するマウスの作製に関しては、肝星細胞にのみ発現するLrat遺伝子改変マウスを使用して検討する。作製したマウスに関しては、MASH食を用いた慢性肝障害モデルにより、肝炎や肝線維化の誘導と評価を行っていく予定である。肝炎の評価は、好中球やマクロファージに対する抗体を用いた免疫染色や、qRT-PCRによる炎症性サイトカインの発現解析により行う。肝線維化の評価は、Sirius red染色や抗Collagen1抗体等を用いた免疫染色、qRT-PCRによる線維化関連遺伝子の発現解析により行う。引き続き、MASHの病態形成におけるアポトーシスやフェロトーシスの役割の解明を目指し、研究に取り組む。
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