研究課題/領域番号 |
23K15085
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
大熊 遼太朗 昭和大学, 医学部, 講師 (30833769)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 可溶性PD-L1 / 免疫チェックポイント阻害薬 / バイオマーカー / 膵臓がん / 可溶性免疫チェックポイント |
研究開始時の研究の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は多くのがん種で効果を認めている一方で、膵臓癌においては良好な抗腫瘍効果は得られていない。そのため膵臓癌においてICI不応機序解明とその克服、また優れた治療効果予測バイオマーカーの探索が求められている。我々は免疫チェックポイント分子(PD-L1)の一部が可溶性形態(sPD-L1)として末梢血中にも存在することに着目した。膵臓癌を含む様々ながん種のin vitro,in vivo実験からsPD-L1が抗PD-1抗体の効果減弱に関わる機序を明らかにすることを目的とする。さらに、sPD-L1を阻害することで抗PD-1抗体薬の効果を向上できるかについても検証する。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)への不応機序解明のため、我々は免疫チェックポイント分子の一部が可溶性形態として末梢血中に存在することに着目して研究を行い、抗PD-1抗体治療を受けたがん患者において、可溶性PD-L1(sPD-L1)濃度の上昇が腫瘍進行と有意に相関することを示した。sPD-L1が抗PD-1治療抵抗性に関与することは様々ながん種で示唆されているが、その機序は不明である。そこで、末梢血中sPD-L1がICIの抗腫瘍効果に与える影響を明らかにすることを目的に研究を行った。 sPD-L1を強制発現する細胞株培養液からsPD-L1を抽出し、抗PD-L1抗体を反応させ、sPD-L1が抗PD-L1抗体との結合能を有することを確認した。さらに、膜貫通型PD-L1分子(mPD-L1)とsPD-L1は、ともにPD-1に結合する。抗PD-L1抗体を添加することによって、mPD-L1とsPD-L1の、PD-1への結合が阻害されることを明らかにした。すなわちsPD-L1はPD-1に結合能力を有していて、抗PD-L1抗体によって結合を阻害されることが確認された。sPD-L1はICIと関連していることが示唆され、抗PD-1抗体薬に与える影響も明らかにしていく。 また我々は、腫瘍細胞株(MC38)をマウス皮下に接種し、抗PD-1抗体の抗腫瘍効果を確認し、マウスの1/3で完全奏効CRが得られた。抗PD-1抗体、sPD-L1、抗PD-1抗体+sPD-L1をそれぞれ添加し、抗腫瘍効果を確認する方針である。また、sPD-L1強制発現細胞株を移植したマウスを作成し、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体薬の投与によって抗腫瘍効果が妨げられるのかも比較検討する。 さらに次年度の計画としては、sPD-L1に特異的な抗体を獲得し、sPD-L1とPD-1の結合を阻害する抗体の同定とその機能解析を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICIは、多くのがん種で著明な効果を認めている一方で、一部のがん種や患者集団では、抗腫瘍効果が得られない不応例も存在する。その問題点を克服することで、優れた治療効果予測バイオマーカーを探索することが求められている。ICIへの不応機序解明のため、我々は免疫チェックポイント分子の一部が可溶性形態として末梢血中に存在することに着目して研究を行い、抗PD-1抗体治療を受けたがん患者において、可溶性PD-L1(sPD-L1)濃度の上昇が腫瘍進行と有意に相関することを示した。そこで、末梢血中sPD-L1がICIの抗腫瘍効果に与える影響を明らかにすることを目的に研究を行った。 sPD-L1を強制発現する細胞株培養液からsPD-L1を抽出し、sPD-L1が抗PD-L1抗体との結合能を有することを確認した。さらに、膜貫通型PD-L1分子(mPD-L1)とsPD-L1は、ともにPD-1に結合することが知られている。抗PD-L1抗体を添加することによって、mPD-L1とsPD-L1の、PD-1への結合が阻害されることを明らかにした。すなわちsPD-L1はPD-1に結合能力を有していて、抗PD-L1抗体によって結合を阻害されることが確認された。 マウスを用いた実験では、腫瘍細胞株(MC38)をマウス皮下にそれぞれ接種し、抗PD-1治療の抗腫瘍効果を確認し、マウスの1/3で完全奏効(CR)、1/3で部分奏効(PR)、1/3で増悪(PD)が得られた。抗PD-1抗体、sPD-L1、抗PD-1抗体+sPD-L1をそれぞれ添加し、抗腫瘍効果を確認していく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの我々の研究結果からsPD-L1は抗PD-L1抗体と関連していることが示唆されており、抗PD-1抗体薬に与える影響についても明らかにしていく。またsPD-L1がICIに与える機能的影響についての解析も進める方針である。sPD-L1はT細胞の再活性化の抑制に関与していることが示されており(J Exp Med. 2019 Apr 1;216(4):982-1000)、今後はsPD-L1とT細胞上のPD-1の結合阻害することによる、IFNγ、パーフォリンの産生能や細胞障害活性が向上するかについて機能的解析を行っていく。 またマウスを用いた実験では、抗PD-1抗体が3割有効であることが我々の研究で証明されている腫瘍細胞株(MC38, CT26 cell)をマウス皮下にそれぞれ接種し、抗PD-1抗体、sPD-L1、抗PD-1抗体+sPD-L1をそれぞれ添加し、抗腫瘍効果を確認する方針である。ICIの選択については、抗PD-1抗体の治療を、抗PD-L1抗体薬でも実施していく。また、sPD-L1強制発現細胞株を移植したマウスを作成し、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体薬の投与によって抗腫瘍効果が妨げられるのかも比較検討する。 さらに、次年度の計画としては、sPD-L1に特異的なアミノ酸からなるペプチドをマウスに免疫し、抗体産生細胞を取得してハイブリドーマを作製し、sPD-L1に特異的な抗体を獲得したうえで、sPD-L1とPD-1の結合を阻害する抗体の同定とその機能解析を実施していく方針である。
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