研究課題/領域番号 |
23K15166
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
柴田 敦 大阪公立大学, 大学院医学研究科循環器内科学, 病院講師 (60722668)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | コホート研究 / 心筋組織凍結保存 / 逆リモデリング / microRNA / 拡張型心筋症 / 心筋組織 |
研究開始時の研究の概要 |
拡張型心筋症では遺伝子異常が認められる症例は限られており、遺伝子発現制御の異常こそが重要と考える。遺伝子発現の制御機構として、miRNAが注目されている。本研究では“環境要因・後天性要因によるmiRNAの発現の変化が、拡張型心筋症患者の心筋リモデリングに関与する”という仮説を明らかにするために、患者の心筋生検サンプル中のmiRNAが心筋のリモデリングに及ぼす影響を検証する。更に、心筋リモデリングを制御する候補miRNAに関してはモデルマウスを用いて治療薬の候補となりうるか検証を行う。本研究にて得られた成果から“miRNAの制御という観点からみた拡張型心筋症の新規治療標法の開発”に繋げたい。
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研究実績の概要 |
本研究では、特定疾患の一つである拡張型心筋症の病態の解明を目指すべく、“環境要因・後天性要因によるmicroRNA(miRNA)の発現の変化が、拡張型心筋症患者の心筋リモデリングに関与する” という仮説を立てた。そして仮説を検証すべく、拡張型心筋症患者の心筋生検サンプルの組織所見と心筋組織中のmiRNA発現との関連、miRNA発現と臨床アウトカムとの関連を解析することを計画した。 その中で、まず初年度の令和5年度に、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備した。このコホート研究では画像による体組成の評価、血液サンプルの凍結保存、心筋生検時の心筋残余組織の凍結保存も含んでいる。このコホート研究から、男性非虚血性心筋症患者の運動耐容能改善に貧血が寄与すること(Heart Vessels. 2024;39:412-426.)を見出した。 コホート研究から最終診断が拡張型心筋症であった患者を抽出し、6か月後の評価で心機能改善が得られた症例と得られなかった症例に分け、心筋組織中のmiRNAの評価を行った。18名(心機能改善群9名、心機能非改善群9名)で心筋組織中のmiRNAを抽出し、発現プロファイルを網羅的に検討した。結果、miR-18a-5pおよびmiR-198など複数のmiRNAが2群間で有意な発現量の差を認めた。この2群間で有意な発現量の差を認めたmiRNAに関しては、病理組織所見との関連を評価したところ複数のmiRNAが心筋細胞の大小不同や間質面積と有意な相関を認めた。特にmiRNA-3936は間質面積と強い相関を示すことを見出した(2024年日本循環器学会で発表)。 引き続きmiRNAが制御する遺伝子と分子間の相互作用ネットワークであるパスウェイ解析を進め、心機能改善のメカニズムの解明を目指す方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、令和5~7年度の課題として、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を継続実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備することを掲げた。こちらに関しては、計画通り進めることが出来ており、本コホート研究から一定の成果も報告することが出来ている。 また、令和5~6年度の課題として、心筋生検組織を用いたmiRNA解析と組織所見・臨床経過との関連の検討を掲げた。上記コホート研究に登録された患者から、最終診断が拡張型心筋症であった患者18名を抽出し心筋組織中のmiRNAの検討を行った。結果、心機能の改善の有無でmiRNAの発現プロファイルの差を認めた。更に、心機能の改善の有無で有意な発現量の差を認めたmiRNAに関しては、病理組織所見との関連を評価したところ複数のmiRNAが心筋細胞の大小不同や間質面積と有意な相関を認めることを見出した。 引き続き心筋組織所見との関連の評価を行い、更にmiRNAが制御する遺伝子と分子間の相互作用ネットワークであるパスウェイ解析を進めていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績に報告した通り、心機能の改善の有無で分けた2群間で有意な発現量の差を認め、病理組織所見との相関も認められたmiRNAに関して更なる検討を進める予定である。miRNAが制御する遺伝子と分子間の相互作用ネットワークであるパスウェイ解析を進め、心機能改善のメカニズムの解明を目指す。 また、当初の方針通り、血液サンプルを用いたmiRNA解析にも着手する。患者血清よりエクソソーム画分を抽出・精製し、エクソソームに含まれるmiRNAを、キットを用いて抽出する。このmiRNAの発現を、先の心筋組織から得られたmiRNAの結果と照らし合わせて検証することで、血中のmiRNAが拡張型心筋症患者の臨床的バイオマーカーとなりうるか検討する。 更に、候補miRNAに関しては、拡張型心筋症モデルマウスを用いてmiRNA制御による治療の可能性を検証する。心筋リモデリングを抑制し、臨床転帰を改善させる候補miRNAに関しては模倣核酸(mimic)の作成を検討する。また、心筋リモデリングを進展し、臨床転帰を悪化させる候補miRNAに関しては、miRNAとmRNAの結合をantimiRとよばれるmiRNAと相補的な塩基配列を有するアンチセンス核酸で阻害することで検証を行うことを検討する。
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