研究課題/領域番号 |
23K15216
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤岡 伸啓 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80790237)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | COPD / 脂肪由来間葉系幹細胞 / タバコ煙由来物質 / 血管内皮細胞 / 肺胞上皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性閉塞性肺疾患 (COPD) は喫煙などの有害物質の長期吸入曝露により、末梢気道病変と気腫性病変を来す肺疾患である。COPDの病態、呼吸機能を改善する治療法はなく、肺胞構造の再生を目指した幹細胞による再生医療が注目されている。申請者は幹細胞から効率的に肺胞構造を再構築するには上皮細胞と血管細胞の双方を誘導する必要性がると考えた。本研究では、脂肪由来間葉系幹細胞の上皮細胞および血管内皮細胞への効率的な分化法を確立し、タバコ煙抽出物質を用いた新規のCOPD病態モデルにおいて有効性の評価を実施し、COPDに対する幹細胞療法の臨床応用へ向けた基盤確立を目指す。
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研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患 (COPD) は喫煙などの有害物質の長期吸入曝露により、末梢気道病変と気腫性病変を来し、呼吸機能検査で気流閉塞を示す肺疾患である。現在、COPDの病態、呼吸機能を改善する根本的な治療法は確立されていない。申請者は、肺胞構造の再生を目指した再生医療に着目し、脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)の投与によって、COPDの病態を一定程度改善できることを示してきた。本研究はこの着想を発展させて、ADSCによって効率的に肺胞構造を再構築させるために、ADSCから上皮細胞および血管内皮細胞への効率的な分化方法を確立することを目的とした。また、喫煙によって誘導されるCOPD病態モデルは長期のタバコ主流煙曝露を必要とすることから、タバコ煙抽出物質を用いて短期間・簡便に作製可能なCOPD病態モデルを確立し、ADSCの病態改善効果を検討する。2023年度は、ADSCから血管内皮細胞への分化方法の確立に着手し、VEGF存在下でずり応力を加えることで、血管内皮細胞マーカーであるPECAM1およびKDRの遺伝子発現が相乗的に促進されることを確認した。さらにcAMPを追加で加えることで、上記血管内皮細胞マーカーの遺伝子発現のさらなる上昇と、VEGFR2タンパク発現が確認され、血管内皮細胞系列への分化が起こっていることが示唆された。一方、タバコ煙由来物質を用いたCOPD病態モデルマウスの作成に対しては、poly(I:C)を併用することで、肺気腫は誘導できた一方で炎症が強く、さらなる改良が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の一つは、試験管内でADSCを肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の双方に誘導することである。2023年度はADSCを血管内皮細胞への分化誘導を試み、血管内皮細胞が発現する遺伝子ならびにタンパクの発現が確認され、血管内皮前駆細胞への分化が示唆されたが、最終分化の確認には至っておらず、分化誘導の程度を詳細に評価し誘導効率を高める必要がある。新規COPD病態モデルにおいては、タバコ煙由来物質とpoly(I:C)の併用により、肺気腫を誘導できることが確認できたが、同時に強い炎症を認め、さらなる改善が必要があり、モデル確立には至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に作成した血管内皮前駆細胞の分化誘導の程度を、フローサイトメトリーや免疫染色などの手法でより詳細に評価した上で、より効率的に分化誘導する方法を模索する。また、IPS細胞など他の幹細胞による上皮細胞への分化誘導法を参考に、ADSCから上皮細胞への分化誘導法確立を試みる。COPD病態モデルに関しては、タバコ煙由来物質及びpoly(I:C)を併用し肺気腫は作成できたものの炎症が強かったため、より炎症が起こりにくい物質との併用により病態を反映したモデルの作成を行っていく。
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