研究課題/領域番号 |
23K15234
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
林 宏栄 自治医科大学, 医学部, 助教 (00769292)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | リン / 腎障害 / 線維芽細胞増殖因子23 / 骨吸収 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、すでに知られている食事(体外)由来の過剰なリン摂取が、腎障害を発症することに着目し、骨量が減少した時の骨(体内)由来のリンが腎臓に与える影響について検証する。骨由来のリンが腎障害の発症・進行の要因となることを、マウスを用いて解明する。これは、臨床で問題となっている骨量減少を伴う疾患(骨粗しょう症など)において、骨量を維持する治療が、骨折予防だけでなく、腎保護を標的とした治療となりうることを示す研究である。
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研究実績の概要 |
本研究では、骨(体内)由来のリンが食事(体外)由来のリンと同様に腎障害を発症するという仮説を立て、血中リン濃度や線維芽細胞増殖因子(FGF)23濃度、大腿骨の海綿骨量、尿中リン量などについて検討した。すでに報告されている急激な骨量減少を来す骨量減少マウスを用いて実験を行った。骨量減少を来す薬剤を単回投与すると、大腿骨の海綿骨量は約5%減少し、血中リン濃度は対象群の約1.5倍、血中FGF23濃度は対象群の約5倍に上昇した。また、3回連続で薬剤を投与すると、大腿骨の海綿骨量は約30%減少し、血中リン濃度は対象群の約2倍、血中FGF23濃度は対象群の約30倍に上昇することを確認した。このように、骨量が減少すると骨に蓄えられていたリンは血中に流入することが明らかになった。また、骨代謝マーカーである血中のTRAcP-5bを計測したところ対象群の約4倍に上昇しており破骨細胞の活性化が確認された。続いて、FGF23が上昇したことから、血中に流入したリンが尿中に排泄されることを確認するために代謝ゲージで畜尿を行った。その結果、3回連続で薬剤を投与した場合、薬剤投与後の24時間のリン排泄量は、対象群の約3倍に上昇した。これらの結果は申請者が事前に見出した新知見を再現する結果となった。そして、腎障害を確認するために遺伝子発現を検討したところ、対象群と比較して尿細管障害マーカーと炎症マーカー遺伝子の有意な上昇を認めた。以上から、骨量減少により骨から溶出したリンが腎臓から排泄され、尿細管障害を来すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、今年度の実験計画として、上記の研究実績に加えて腎障害の原因となるリン酸カルシウム結晶の同定と腎臓の組織学的染色あるいは免疫組織学的染色を用いて腎障害の評価を行う予定であった。まずリン酸カルシウム結晶の同定に関しては、すでに我々の研究室から報告している、尿中のリン排泄量増加に伴う微細なリン酸カルシウム結晶が腎障害発現部位である皮髄境界に見られることを、本研究で検討した。しかし、ex-vivo imagingでは1匹の操作に30分程度時間を要し、統計学的に解析のできる匹数での結果が得られず、また、リン酸カルシウム結晶が出現する時間帯を見つけ出すために試行錯誤を繰り返したことで、予定していた実験計画よりやや遅れている状態となった。また、本研究で得られた腎臓の染色に関しては十分な時間が確保できず、未染色の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
腎障害の原因として微細なリン酸カルシウム結晶が原因であると仮説を立て、ex-vivo imagingに時間を割いてしまったため、まずは骨量減少による腎臓への影響(腎障害)を証明することを優先とする。遺伝子発現で見られたように、尿細管障害マーカーと炎症マーカーの遺伝子上昇に相関するかどうかを、本研究の腎臓を用いて組織学的染色と免疫組織学的染色を用いて腎臓の評価を行う。その次の検証として、骨量減少を来す薬剤の投与が直接腎臓に影響している可能性を除外するために、骨量減少を予防した上で骨量減少マウスを用いて同様の実験を行い、腎臓に及ぼす影響を検証する。
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