研究課題/領域番号 |
23K15261
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
川島 秀介 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (70916436)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / 抗腫瘍免疫応答 / IFN-γ / JAK / MHC class I / Nf-kB / 悪性黒色腫 / IFN-g |
研究開始時の研究の概要 |
IFN-gシグナル異常が免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の耐性化に関わることが報告されているが、詳細なメカニズムは未だ不明である。抗腫瘍免疫応答に重要でその障害が耐性に関わるとされるIFN-gシグナルであるが、一方でそのシグナル非依存的なICIの感受性・耐性に関わる因子が存在することが代表者らのこれまでの解析から示唆された。そこで、本研究では代表者がこれでの研究で着目したMCH class IとCD155に関して、IFN-g非依存的な発現因子をCRISPRスクリーニングで網羅的に探索することで、新たなICIの感受性・耐性因子を同定し、新規治療標的の可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
IFN-γシグナル経路異常は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に耐性化することが知られているが、そのシグナル異常があってもICIが奏功する例もあり、その詳細な機序は不明である。ICIが奏功した患者検体よりメラノーマ腫瘍細胞株と同細胞株のJAKノックアウト(KO)株を作成した。この細胞株ではJAKをKOすることでIFN-γの反応性は消失した一方で、MHC class I(MHC-I)の発現は保たれていた。また、同検体より腫瘍浸潤リンパ球株を作成し、in vitroで抗腫瘍免疫応答能を評価したところ、JAKのKOに関わらず、抗腫瘍免疫応答は同程度認められた。 マウスモデルでも、MHC-IがIFN-γ依存的に発現している腫瘍細胞株のJAK-KO株ではICIに耐性化したが、MHC-IがIFN-γ非依存的に発現している腫瘍細胞株はJAK-KO株であってもICIが有効であった。In vitroでは、両腫瘍株ともJAK-KOにより、IFN-γによる腫瘍細胞の増殖抑制や腫瘍細胞からのケモカイン産生誘導の作用は低下していた。以上から、IFN-γシグナル経路異常がある状況におけるICIの感受性は、腫瘍増殖抑制作用やケモカイン産生誘導作用ではなく、シグナル非依存的なMHC-Iの発現レベルに依存することが明らかになった。 さらに、MHC-Iの発現がIFN-γシグナル依存するマウス腫瘍細胞株と、シグナル非依存的に発現が保たれているマウス腫瘍細胞株に対して、CRISPRスクリーニングを用い、IFN-γ非依存的なMHC-Iの発現機序の網羅的検索を行った。それらの結果により複数の候補分子を見出し、それらのうちGng4に着目した。IFN-γ非依存的にMHC-Iの発現が保たれる腫瘍株に対し、Gng4をノックダウンするとMHC-Iの発現は低下し、それらはNf-kBの不活化に起因することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IFN-γシグナル異常があるにも関わらずICIが奏功する要素として、IFN-γシグナル非依存的なMHC-Iの発現が最も重要であることを実験的に証明した。さらに、IFN-γ非依存的なMCH-Iの発現機構をCRISPRスクリーニングを用いて網羅的に検索し、Gng4を含む複数の候補分子を同定し、Gng4はNf-kBを介したMHC-Iの発現に関わっていることを明らかにした。各種細胞株やJAKノックアウト株などを作成済みであったこともあり、順調に推移した。
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今後の研究の推進方策 |
IFN-γシグナルが活性化しているにも関わらずICIに耐性化する要因として、TIGIT/CD155の関与を報告し、さらにCD155がIFN-γ非依存的に発現することを見出している。CD155は腫瘍細胞に発現し、T細胞に発現するTIGITと結合することでT細胞機能を抑制するが、その発現制御機構はいまだ明らかになっていない。今後はIFN-γシグナルが活性化している状態における耐性機序としてのCD155の発現がどのように制御されているのかを明らかにしていく予定である。 CIRSPRスクリーニングを用いて、CD155の発現に関わっている分子を網羅的に検索し、候補分子をそれぞれ別個にノックダウンすることにより、タンパクレベルでのCD155の発現が低下するかどうか、また遺伝子導入により発現が増強するかどうか確認し、発現を規定する分子を明らかにする。 同定した分子の治療標的における可能性については、in vitro、in vivo実験により評価の上、臨床検体を用いた大規模な検証を行う。
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