研究課題/領域番号 |
23K15339
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
熊谷 仁 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30846142)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 病原性Th2細胞 / USP7 / Granzyme A / Granzyme B / STAT3 / アレルギー / 気管支喘息 |
研究開始時の研究の概要 |
喘息等のアレルギー性疾患の患者数は世界的に増加の一途を辿っており、効果的な新規治療法の開発が急務である。2型ヘルパーT(Th2)細胞が産生する炎症性サイトカインのインターロイキン(IL-)5やIL-13は喘息の病態形成において非常に重要な役割を担っている。私はこれまでに、Th2細胞が不均一な細胞集団であることを見出し、IL-5/13産生に関して重要な役割を担う可能性のある分子と、その分子を産生するTh2細胞のサブセットを同定してきた。その分子がTh2細胞の過剰なサイトカイン産生を誘導する機序をより詳細に解析し、難治性アレルギー性疾患の新規治療法開発につなげるのが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で、Th2細胞が産生するIL-5やIL-13といった炎症性サイトカインが喘息において非常に重要な役割を果たしていることが示されている。Th2細胞の分化については、分化開始の条件などについては以前から報告が多いものの、分化過程の詳細なメカニズムは未だ明らかとなっていなかった。そこで本研究では、Th2細胞の分化過程をsingle cell RNA-sequence(sc-RNA-seq)を用いて解析した。 in vitroのマウスTh2細胞をsc-RNA-seqで解析すると、分化の中間段階の細胞ではgranzyme A・Bを発現する細胞が出現していることが明らかとなった。次にフローサイトメトリーで解析すると、granzyme産生Th2細胞は確かにIL-5やIL-13といったTh2サイトカインを産生する細胞よりも早い段階で出現していることが分かり、Th2細胞の分化の促進に寄与していることが予想された。granzymeの阻害実験や添加実験を行うことでそのことが証明された。 granzymeがIL-5やIL-13の産生を促進する経路として、細胞表面受容体であるPar-1やその下流のp38のリン酸化が関与していることも明らかにした。さらに、Th2細胞でのgranzyme発現には、USP7とSTAT3のリン酸化が関与していることも明らかにした。 in vivoのアレルギー性気道炎症マウスモデルでは、USP7欠損やGzma欠損・granzyme B阻害によって炎症が減弱した。 さらに、ヒトのTh2関連疾患である好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸検体をsc-RNA-seqで解析すると、マウスと同様のTh2細胞集団が存在することが確認された。 以上の結果から、USP7-STAT3-granzyme-Par-1経路がTh2細胞の分化・成熟に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載していた「研究課題の核心をなす学術腋「問い」」として、「IL-5やIL-13を高産生するTh2細胞の分化過程はどのように制御されているのか」、「Th2細胞のGranzyme A/B産生はどのようなメカニズムによって制御されているのか」、「IL-5/13を高産生するTh2細胞の分化が, Th2細胞が産生したGranzyme A/Bによって制御される過程にどのような分子メカニズムが存在するのか」という項目を挙げていた。これらの問いに対する答えとして、今回明らかになったUSP7-STAT3-granzyme-Par-1経路は一つの答えになっており、おおむね研究計画は順調に進行したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかになったUSP7-STAT3-granzyme-Par-1経路は、IL-5やIL-13を産生するTh2細胞の分化にとって重要な役割を担っていることは証明されたが、分子メカニズムのところではまだ不明な点が残っている。例えば、USP7という分子は脱ユビキチン化酵素の1種であり、基質のユビキチンを取り外す反応を触媒することが知られている。しかしながら、今回明らかになった経路としては、USP7の下流にSTAT3のリン酸化反応が来ており、ユビキチンの関与が不明のままである。そこで、今回の経路でUSP7の基質となっている分子を探索するために、既報にある分子をもう一度見直し、ユビキチン化状態などについて評価を行う予定としている。また、STAT3のリン酸化のみならず、総量の変化がないかなど、詳細な分子メカニズムの解明に取り組む予定である。
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