研究実績の概要 |
我々は敗血症患者白血球のシングルセルRNA-seqを行った。敗血症患者サンプルは、大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された直後に採血を行い、白血球を取得し、解析を行った。サンプルとしては健常者2例、敗血症2例の好中球を含む全白血球のシングルセルシーケンスを行っており、いずれもシングルセルRNA-seq解析が終了している。リンパ球においては、健常者、敗血症患者とも一つのクラスターを構成している。しかし、好中球においては、健常者1,2のクラスター、敗血症1のクラスター、敗血症2のクラスターと3つに分かれている。このことは、敗血症患者と健常者の間でリンパ球の遺伝子発現量は大きく異ならないが、好中球の遺伝子発現量は、大きく異なることが示されている。また、敗血症患者の間でも、好中球遺伝子が大きく異なることが示されている。次に健常者と敗血症患者の間でどの遺伝子が異なっているかを解析した。その結果、敗血症患者では、TREM-1, JUND, CXCL8などの遺伝子の発現量が健常人に比べて減少しており、CD177, HK3, S100A8, S100A9などの遺伝子が上昇していた。これらの遺伝子は免疫応答の低下、臓器障害、細胞死に関係があるとされており、敗血症患者では免疫応答の低下と炎症応答の亢進が起こっていることが示唆される。さらに、敗血症患者同士で遺伝子発現量を比較したところ、G0S2, SAT1, MCL1, ACSL1, ADGRE5, CD177, S100A8が一方のサンプルで減少していた。これらの遺伝子は、アポトーシス、炎症応答、細胞増殖に関係のある遺伝子であり、一方のサンプルでは好中球の細胞増殖とアポトーシスが盛んに行われている可能性がある。
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