研究課題/領域番号 |
23K15378
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
花房 慶 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (40867909)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | スフィンゴ脂質 / 細胞内寄生 / 抗原提示細胞 / 極長鎖脂肪酸鎖 / 病原性抗酸菌 |
研究開始時の研究の概要 |
再興感染症である結核や、日本において感染者数が急増している非結核性抗酸菌感染症の原因菌である病原性抗酸菌は、抗原提示細胞による殺菌を回避して細胞内寄生する特徴を持つ。これまでの研究成果から、極長鎖脂肪酸鎖を有するスフィンゴ脂質が殺菌に関与することがわかってきた。しかしながら、細胞内寄生との関連性は不明である。そこで本研究では、スフィンゴ脂質代謝を利用した殺菌回避および細胞内寄生機構について明らかにする。
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研究実績の概要 |
結核の原因菌である結核菌 (MTB)や肺MAC症の原因菌であるMycobacterium avium complex (MAC)は宿主の免疫機構を回避して細胞内寄生する特徴を持つ。これまでに、ヒト好中球では菌体を内包した食胞膜において、病原性抗酸菌は極長鎖脂肪酸鎖を持つスフィンゴ脂質 (VLCFA-SL)のマイクロドメインを標的として、食胞成熟阻害をすることが明らかとなっている。しかしながら、マクロファージや樹状細胞の様な抗原提示細胞における免疫機構の回避による細胞内寄生とVLCFA-SLの代謝との関連性はよくわかっていない。本研究では、抗原提示細胞に貪食されたMTBやMACはVLCFA-SLやその代謝網を利用した細胞内寄生機構について調べることを目的とした。 2023年度は三連四重極型質量分析計を用いたスフィンゴ脂質の定量的かつ網羅的に分析する手法を検討し、スフィンゴ脂質の標準品について複数種類の同時測定ができる測定系を構築した。現在、本手法を用いた測定を試みている。また、細胞内寄生とVLCFA-SLの関係性を調べるために、極長鎖脂肪酸鎖を持つスフィンゴ脂質を生合成する酵素であるセラミド合成酵素 (CERS)2をゲノム編集により欠損させたヒト急性白血病細胞株や、その株にCERS2を過剰発現させた株をマクロファージ系に分化させて、貪食した抗酸菌の殺菌能を検討した。その結果、細胞内に含まれるMACの殺菌にはCERS2の発現が関与していることや、活性化させることでWTと同程度の殺菌能を示すことがわかってきた。これらの結果について、分子機構を調べるために食胞へのタンパク質の局在解析などを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において必須となる質量分析によるスフィンゴ脂質の定量法を確立させることができつつある。また、病原性抗酸菌の細胞内寄生について、宿主の免疫機構を回避する仕組みとCERS2の発現が関与していることを示唆する結果を得られた点からおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
スフィンゴ脂質の定量的な解析を終えていないため、抗酸菌を貪食させた細胞やCERS2を欠損させた細胞株から脂質を抽出して解析を行う。2023年度に得られた結果について、生化学的な解析を実施して殺菌能に関する分子機構を明らかにする。ヒト末梢血由来単球マクロファージや樹状細胞においても、貪食効率や殺菌能を検討する。本研究結果について、どのような抗酸菌由来成分が関与しているかも不明であるため、スクリーニングを行い、原因成分の同定を試みる。また、本研究結果についてCERS2の発現とVLCFA-SLのどちらが強く関与しているかは不明である。そこで、CERS2のミュータントを発現させた系において検証を行う。
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