研究課題/領域番号 |
23K15401
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
村尾 直哉 藤田医科大学, 医学部, 助教 (70964675)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 膵β細胞 / 糖尿病 / KATPチャネル / インスリン |
研究開始時の研究の概要 |
膵β細胞から分泌されるインスリンは糖代謝制御の根幹である。β細胞のATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)は、グルコース応答性インスリン分泌(GIIS)におけるグルコースのセンサーとして重要であるが、その他の役割については十分理解されていない。 本研究では、KATPチャネルを欠損したマウスやβ細胞の生理学的、分子生物学的な解析を行い、KATPチャネルによるβ細胞内シグナルならびに全身代謝の制御機構を明らかにする。本研究は糖尿病の病態理解や治療開発のみならず、イオンチャネルを中心とした代謝恒常性維持機構という新たな生命現象の解明に貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
β細胞のATP感受性Kチャネル(KATPチャネル)はグルコース応答性インスリン分泌(GIIS)に必須であるが、全身の代謝制御における役割については十分理解されていない。本研究では、β細胞KATPチャネルによる細胞内および全身代謝の制御機構を明らかにすることを目的とし、以下の3課題を設定している。 【課題1】 KATPチャネルによるβ細胞増殖の制御機構:インスリン受容体阻害薬(S961)によるβ細胞の反応性増殖がKcnj11(KATPチャネルのサブユニット)欠損マウスにおいて低下することを見出した。単離膵島のメタボローム解析を行うと、S961によるペントースリン酸経路(PPP)の上昇ならびにヌクレオチド(NTP)の増加がKcnj11欠損マウスにおいていずれも低下していた。さらに、PPPに作用する物質Xの投与によって、S961によるβ細胞増殖が促進されることを見出した。これらの結果から、PPPがβ細胞増殖に重要であり、KATPチャネルはPPP活性に必須であることが示唆された。 【課題2】 β細胞を中心とした臓器連関によるインスリン感受性・インクレチン分泌の制御機構:Kcnj11をβ細胞特異的にノックアウト可能なMIP-Cre/ERT+/-; Kcnj11-fl/fl系統マウスを樹立した。今後、本マウスを用いて、KATPチャネルの欠損がインスリン感受性ならびにインクレチン分泌に及ぼす影響を明らかにする。 【課題3】 糖尿病におけるKATPチャネル持続的閉鎖の分子機構:代表者らの先行研究により、KATPチャネルの閉鎖と3量体Gタンパク質Gqの関連が示唆されている。高血糖におけるGqの活性上昇の分子機構について、β細胞株を用いて解析した。興味深いことに、脱分極に伴う細胞内Caの増加によりGqが活性化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の通り、当初の計画に従い研究を遂行しているため、概ね順調に進展していると判断する。 【課題1】 KATPチャネルによるβ細胞増殖の制御機構:野生型マウスおよびKcnj11(KATPチャネルのサブユニット)欠損マウスにインスリン受容体阻害薬(S961)を投与し、反応性のβ細胞増殖を評価した。野生型において、S961によりβ細胞増殖・β細胞面積の増大が認められたが、これらはいずれもKcnj11欠損マウスにおいて低下していた。膵島のメタボローム解析を行うと、野生型においてはS961によりペントースリン酸経路(PPP)の上昇ならびにヌクレオチドの増加が認められたが、これらはKcnj11欠損マウスにおいて認められなかった。さらにPPPに作用する物質Xの投与によってS961によるβ細胞増殖が促進されることを見出した。これらの結果から、PPPがβ細胞増殖に重要であり、KATPチャネルはPPP活性に必須であることが示唆される。 【課題2】 β細胞を中心とした臓器連関によるインスリン感受性・インクレチン分泌の制御機構:β細胞特異的Kcnj11欠損マウスにおけるインスリン感受性の亢進ならびにインクレチン分泌亢進の分子機構を解析するために、タモキシフェン投与によりKcnj11をβ細胞特異的にノックアウト可能なMIP-Cre/ERT+/-; Kcnj11-fl/fl系統マウスを樹立した。現在、個体数を増加中である。 【課題3】 糖尿病におけるKATPチャネル持続的閉鎖の分子機構:高血糖におけるGqの活性上昇の分子機構についてβ細胞株を用いて解析した。興味深いことに、脱分極に伴う細胞内Caの増加のみでGqが活性化することを見出した。高血糖下のβ細胞においては、脱分極、Ca流入、Gq活性化、KATPチャネル閉鎖のフィードバックによって、KATPチャネルの持続的閉鎖が引き起こされることが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】 KATPチャネルによるβ細胞増殖の制御機構:KATPチャネルがPPP活性を制御する分子機構を解析する。特に、Kcnj11とPPPの律速酵素であるG6PDの相互作用の有無について検討する。また、β細胞におけるPPP活性が糖尿病においてどのように変化しているか、物質Xによるβ細胞増殖の促進によって糖尿病の病態が改善できるかについて、糖尿病モデルマウスを用いて検証する。 【課題2】 β細胞を中心とした臓器連関によるインスリン感受性・インクレチン分泌の制御機構:MIP-Cre/ERT+/-; Kcnj11-fl/fl系統マウスにおいて、タモキシフェンによるKATPチャネルの欠損がインスリン感受性ならびにインクレチン分泌に及ぼす影響を明らかにする。さらに、この分子機構を解明するために、迷走神経切断実験、光遺伝学による神経刺激実験を行う。また、血清のプロテオーム解析により、KATPチャネル欠損によって変動する液性因子を同定し、候補因子の機能解析を行う。 【課題3】 糖尿病におけるKATPチャネル持続的閉鎖の分子機構:細胞内Caの増加のみでGqが活性化する分子機構を明らかにする。特に、Caにより活性化される種々のシグナル伝達経路が3量体Gタンパク質サブユニットに及ぼす修飾について、生化学的手法により解析する。
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