研究課題/領域番号 |
23K15407
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
上船 史弥 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (70974046)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / GPCR / ドーパミン / 膵臓ベータ細胞 / 膵臓 |
研究開始時の研究の概要 |
ドーパミンは膵臓β細胞のインスリン分泌を抑制する負の調節因子である。β細胞ではドーパミン受容体D1とD2が発現しインスリン分泌の抑制に関与するが、その詳細な分子機序は未解明である。本研究ではD1およびD2がインスリン分泌を制御する機序を、「Gタンパク質共役型受容体(GPCR)が他のGPCRと会合した多量体を形成することで下流シグナルを調節する」という考えに基づき解明することを目的とする。本研究によってドーパミンによるβ細胞の分泌能制御への理解が深まり、その成果は糖尿病治療に対する新たな標的の創出に貢献すると期待される。
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研究実績の概要 |
我々は膵臓β細胞におけるグルコース応答性インスリン分泌(GSIS)を抑制する機構の1つとしてドーパミンに着目して研究を行ってきた。特に長期に渡る過剰なインスリン分泌はβ細胞を疲弊させ、最終的には分泌機能不全や脱分化、細胞死を引き起こすため、GSISを適切に抑制する機構が重要とされる。最近、我々はドーパミンD1受容体(D1)がD2受容体(D2)と会合したヘテロ多量体を形成することでインスリン分泌を抑制することを発見した。しかし、ドーパミンがGSISを制御する機序について完全には解明できていない。近年では、複数のGPCRがリガンドの有無により会合または解離状態となることで下流シグナルを調節するという考えが提唱されている。本研究ではこのGPCR同士の相互作用に着目し、D1またはD2と相互作用するGPCRを同定することで、ドーパミンがGSISを調節する分子機構を解明することを目的とする。 本年度において、まずは近接依存性標識法およびプロテオミクス解析によりD1またはD2と相互作用を有する可能性のあるGPCRの同定を行った。マウス膵β細胞株(MIN6)に対して西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をD1またはD2のN末端に融合したタンパク質を強制発現し、細胞膜非透過性ビオチン-xx-フェノールを用いて近接するタンパク質を標識した。解析の結果、D2との相互作用が予測される候補GPCRが得られた。しかしながら、多数の膜タンパク質が検出された一方で、検出されたGPCRの数が少なかったため、今後は細胞膜タンパク質の分離濃縮などにより改善が可能かを検証する。また、次年度においては得られた候補GPCRとの会合の有無を検証するとともに、GSISへの寄与を調べる。さらに遺伝子改変マウスを用いてD1およびD2と生体における血糖恒常性維持との関連性を調べていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はD2との相互作用が予想される候補GPCRを近接依存性標識法により同定した。また、GPCR同士の会合解離状態を調べる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を行うため、D1およびD2と蛍光タンパク質との融合タンパク質(mDrd1-mVenus、mDrd2-ECFP)を強制発現するプラスミドを作製した。今後は同定された候補GPCRについてもFRET用プラスミドの構築を行う。また、生体における血糖恒常性維持に対するD1およびD2の役割を評価するための、β細胞特異的D1またはD2欠損マウス(Pdx1-CreERT2::Drd1fl/fl、Pdx1-CreERT2::Drd2fl/fl)を作製した。今後、得られたマウスを繁殖させ、高脂肪食給餌による2型糖尿病の誘導を行い、耐糖能やインスリン分泌量を追跡する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、まず候補GPCRの絞り込みを行うための近接依存性標識法およびプロテオミクス解析について、細胞膜タンパク質を分離濃縮させることで改善を試みる。その後、実際にGPCR同士の会合が見られるかをDuolink法およびFRET法により検証する。FRET実験用のプラスミドの鋳型は既に完成しているので、候補GPCRの遺伝子を挿入するだけでプラスミド作製は完了する。インスリン分泌への寄与を検証するため、ドーパミンおよびD1とD2の阻害剤と候補GPCRの活性化剤または阻害剤を組み合わせて使用し、インスリン分泌量の比較を行う。また、現在繁殖させているD1またはD2欠損マウスに対して高脂肪食給餌を行い、表現型を調べることで生体の血糖恒常性におけるドーパミン受容体の意義について解明する。
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