研究課題/領域番号 |
23K15431
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
政野 裕紀 京都大学, 医学研究科, 助教 (50806718)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 肝移植 / 臓器保存 / 臓器保存液 |
研究開始時の研究の概要 |
新規臓器保存液ECOSOL、臓器保存システムECOFLOWを用いてラット肝移植を行う。ラットからECOSOL/HTKにて潅流後に肝臓を摘出し、バックテーブルにて部分肝グラフトを作成し、ECOFLOWシステムと接続し逆行性に肝静脈から酸素投与を行う。その後、同所性肝移植を行い、術後1-2週間の生存成績を確認する。拒絶モデルでは免疫抑制療法として24時間ごとに免疫抑制剤を投与する。また術後1日目、3日目での犠牲死を行い、血液、肝臓のサンプリングを行い、肝障害の程度、肝再生率、肝微小循環、虚血再灌流障害を評価し、ECOSOL,ECOFLOWの有用性を検討する。
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研究実績の概要 |
日本では生体肝移植が年間400件程度行われているが、慢性的な脳死ドナーからのグラフト不足の問題があり、脳死肝移植治療が定着している欧米でも、臓器不足への対応から生体肝移植や分割脳死肝移植が求められている。しかし過小グラフトを移植した場合には肝再生は促進されず、移植成績は不良である。 われわれはドナープールを拡大すべく、過小グラフトにおける門脈血行動態の調整、酸素や一酸化窒素を用いたガス灌流によるreconditioning、異種動物内での肝グラフトの再生などを行ってきた。 また、臓器保存液はUW液やHTK液が開発されて以来、移植後の肝機能や低温虚血保存中の肝障害の軽減に関して大きな改善は報告されていないが、ドイツの研究グループはドナー臓器の質を向上させるために、新しい臓器保存液「ECOSOL」を開発した。 さらに肝静脈から逆行性に酸素を投与する逆行性酸素投与法venous-systemic oxygen persufflation (VSOP)と呼ばれる、静脈血管系を介して移植片に気体酸素を逆行性に送気する方法が検討されており、この方法を携帯型に進化させた新規臓器保存機械「ECOFLOW」を開発した。 本研究の目的は、「新たに開発された臓器保存液ECOSOLと欧州で標準的な溶液であるHTKを比較し、ECOSOLおよび新規携帯型VSOP機械であるECOFLOWが部分肝グラフトの肝再生をより促進し移植後の生存率向上に寄与する」ことが可能であるかをラット肝移植で検証することである。現時点では、ラット全肝移植、部分肝移植の手技が確立し、保存液の輸送後の安定性を検証し、新規保存液の有用性を検証している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規臓器保存液であるECOSOLおよび臓器保存システムECOFLOWをドイツの研究グループから受理し、そのクオリティチェックを行う予定としていたが、運搬輸送方法などの調整を現在模索しており、届き次第、ECOFLOWシステムが問題なく作動するかを検証予定である。またECOSOLの最終的なクオリティチェックは、溶液を血液ガス測定により行う。最終的には、ドイツで行ったラット移植実験結果との比較検討を行う予定である。 現在、これらの保存液、システムを使用するためにラットを用いた肝移植実験を行っている。肝移植実験をドナーであるLewisラットからHTKにて全身を潅流後に、肝臓を摘出し、冷保存3時間としている。ECOFLOW以外の逆行性に酸素投与を行う方法も検討している。その後に、バックテーブルにて全肝グラフトを30%部分肝グラフトとなるよう切除を行う。バックテーブルでの肝切除終了後に、拒絶反応の生じないLewisラットからLewisラットで部分肝移植を行い、術後7日目あるいは14日目で生存成績の確認を行う。Lewis to Brown Norwayの肝移植では拒絶反応が生じるため、免疫抑制療法として術後7日間あるいは14日目の犠牲死まで、24時間ごとに免疫抑制剤(シクロスポリンA、2.0mg/kgおよびヒドロコルチゾン0.75mg/kg)の皮下注射を行う予定である。現時点ではsyngenic モデルでの検証にとどまっているが、移植成績が安定してきたため、拒絶モデルでの実験も準備している。
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今後の研究の推進方策 |
ラット部分肝移植(Lewis to Brown Norway, Lewis to Lewis)を行い、術後1日目、3日目での犠牲死を行い、血液、肝臓のサンプリングを行う。生存成績のサンプル収集が十分であない場合は、本年度も継続して行う。 血液:全身の静脈血を下大静脈から採取した。ALT, AST, LDH, ビリルビンを測定する。 肝再生率:Lewis to Brown Norway、Lewis to Lewis間の移植における肝再生率(重量の変化およびKi-67染色)を評価する。 肝微小循環の解析:Transit血流計を用いて門脈血流・門脈圧、更にレーザードップラーを用いて肝組織微小循環を測定する。 血液検体:虚血再灌流障害の指標として血清中のAST、ALT、ビリルビン、ヒアルロン酸、Lactate、Inter-Cellular Adhesion Molecule 1(ICAM-1), Vascular Cell Adhesion Molecule-1 (VCAM-1) 、NO濃度を測定する。PT、APTT、血小板に加え、ADAMTS13、PIC、TAT、TFを測定し、凝固線溶異常をモニタリングする。肝再生の指標として、HGF、VEGF蛋白(ELISA法)を測定する。 肝臓組織凍結検体:一部は-80度で凍結保存。肝組織中の炎症性サイトカイン(IL-6, TNFα, ICAM-1, VCAM-1など)をELISA法にて、さらにそれらのm-RNA発現を解析する。肝グラフト組織のviabilityを評価する為にATP活性を測定する。肝再生の指標としてKi67染色により、labeling indexを計算し、肝再生促進因子としてHGF、TGFα、EGF、肝再生抑制因子としてTGFβ1、Activinのタンパクの発現をELISA法、Western Blot法にて測定する。
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