研究課題/領域番号 |
23K15454
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大徳 暢哉 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (60867191)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 大腸癌 / サルコペニア / 腫瘍微小環境 / 腫瘍浸潤リンパ球 (TILs) / 骨格筋指数 (SMI) |
研究開始時の研究の概要 |
本邦において大腸癌の罹患数および死亡数は増加している。腫瘍局所の免疫応答とサルコペニアの関連について種々の癌腫で報告されており、大腸癌でも腫瘍局所の免疫応答が全身の炎症反応、サルコペニアに関連し、不良な患者予後につながっていると考えられる。しかし、免疫細胞の浸潤と宿主の骨格筋低下の関連について統合的に解析した研究はなく、そのメカニズムには未だ不明な点が多い。 本研究で多数例の大腸癌切除検体を用いて腫瘍局所免疫とサルコペニアの網羅的解析ならびに腫瘍局所において免疫細胞を誘導する骨格筋分解因子を同定する。さらに、大腸癌の新しい治療法や予後を予測するバイオマーカーの開発につなげるための研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は腫瘍局所の免疫応答が大腸癌患者におけるサルコペニアと関連していることを示し、さらにそのメカニズムについて解明することを主な目的とした。熊本大学消化器外科での研究で大腸癌患者の術前骨格筋量と腫瘍浸潤リンパ球 (TILs)、予後との関連を評価した。2008年から2014年に原発切除を施行した大腸癌患者を対象とし、術前骨格筋量は、術前CTの断層撮影画像で第3腰椎の骨格筋量を使用して評価された骨格筋指数 (SMI)によって評価し、臨床病理学的因子および予後との関係を評価した。当施設ではこれまで術前SMIが低い患者は、SMIが高い患者と比較し、無再発生存期間、全生存期間が有意に短いという報告をしている。また、TILs (CD3+、CD8+、CD4+、Foxp3+T細胞)を免疫組織化学によって評価し、TILsとSMI、予後との関連を評価した。TILsの低発現は、有意に短い無再発生存率と関連し (CD3; p=0.005、CD8; p<0.001、Foxp3; p=0.028)、SMIはロジスティック回帰分析でCD3+およびCD8+T細胞の数と有意に相関していた (CD3; p=0.024、CD8; p=0.046)。術前SMIが低く、CD3+またはCD8+T細胞が少ない患者は、術前SMIが高く、CD3+またはCD8+T細胞が多い患者と比較し、予後不良であった (CD3、CD8ともにp<0.001)。宿主の免疫応答が腫瘍局所の免疫動態に影響し、予後と関連していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究で、腫瘍局所の免疫応答が大腸癌患者におけるサルコペニアと関連していることを示すことができた。本結果は、Ann Gastroenterol Surg誌に報告している。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌においてサルコペニアにおけるTILsの予後に与えるメカニズムを解明するため、以下の通り研究を進める。大腸癌組織からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて腫瘍部におけるMutation burdenや遺伝子変異を解析する。また、大腸癌患者の患者由来PBMCおよびTILsをマスサイトメトリー (CyTOF)を用いて解析し、各免疫細胞の応答頻度を評価する。これらをサルコペニアを有する患者で行い、免疫学的プロファイルを明らかにすることで特異的な分子を同定する。同定した分子を大腸癌細胞株に導入し、上清培養液中に発現する免疫細胞をPCR、Western blottingにて同定する。さらに、controlと比較した増殖能、浸潤能への影響をgrowth assay、invasion assayで評価する。同定した分子をノックアウトしたマウスおよびヌードマウスを用いて、大腸癌細胞株の皮下移植による増殖・進展について評価し、特定の分子が与える影響をin vivoモデルで検証する。
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