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肝癌におけるUSP10のp53安定化が悪性度に与える分子機序解明と新規治療戦略構築

研究課題

研究課題/領域番号 23K15483
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分55020:消化器外科学関連
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

松本 倫典  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90529760)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワード肝細胞癌 / p53 / ユビキチン / 脱ユビキチン化酵素 / USP10
研究開始時の研究の概要

肝細胞癌は腫瘍の悪性度と障害肝による再発率の高さのため癌関連死亡の中でも本邦第3位を占める予後不良な悪性腫瘍である。野生型p53を有する肝細胞癌は全体の7割を占めるが、アポトーシスを誘導せず、増殖、浸潤、転移を起こしてしまう。野生型p53は細胞における非ストレス時にはユビキチン化され分解され、低酸素やDNA損傷といった細胞におけるストレス時に野生型p53を安定化し、p53の様々な細胞応答を促す。野生型p53にアポトーシスが生じないのはp53の代謝経路に問題があることが予想されたため、我々はp53の脱ユビキチン化酵素USP10に着目し、肝細胞癌切除検体や肝癌細胞株を用いて研究を進めてきた。

研究実績の概要

肝細胞癌 は本邦における癌関連死亡の中でも第3位を占める悪性度の高い予後不良な疾患である。日本肝癌研究会による報告では肝細胞癌の肝切除後5年生存率は69.1%であり、根治性が決して高くはない。その原因として腫瘍の悪性度に加え、肝細胞癌では背景にある障害肝に基づく再発率の高さに原因があり、肝細胞癌の肝切除後の5年再発率は約80%にものぼる。肝細胞癌の肝切除後の主な予後規定因子に腫瘍径、腫瘍数、脈管侵襲、肝機能等が挙げられているが、治療成績向上のために腫瘍因子と背景肝因子の新たな予後因子の同定が必要と考えられる。
癌抑制因子であるp53は、半減期が短い微量タンパク質であり、細胞周期の制御、DNA修復、およびアポトーシスに関わる遺伝子群の転写活性化によるDNA損傷への細胞応答の制御の他に、血管新生の抑制や細胞の老化のといった様々な機能にも関与している。
野生型p53を有する肝細胞癌は全体の7割を占めるが、アポトーシスを誘導せず、増殖、浸潤、転移を起こしてしまう。野生型p53は細胞における非ストレス時にはMDM2によりユビキチン化され素早く分解され、低酸素やDNA損傷といった細胞におけるストレス時に野生型p53を安定化し、p53の様々な細胞応答を促す。野生型p53にアポトーシスが生じないのはp53の代謝経路に問題があることが予想されたため、我々はp53の脱ユビキチン化酵素USP10に着目し、肝細胞癌切除検体や肝癌細胞株を用いて研究を進めてきた。本研究の目的は野生型p53を持つ肝癌細胞株および肝細胞癌切除検体を用いてUSP10が分化度や脈管侵襲といった腫瘍の悪性度に与えるメカニズムを解明することである。さらにはUSP10をターゲットとした新規治療戦略を確立することを目的とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

USP10は低酸素や抗癌剤暴露等のストレス下において脱ユビキチン化によるp53の安定化というがん抑制因子として作用する。USP10はその他にもDNA修復機構の遂行(DNAポリメラーゼɳ、MSH2、トポイソメラーゼ2αの安定化)、酸化ストレス化において活性酸素種を低下させアポトーシスを免れる働き、オートファジーへの関与、血管新生抑制といった細胞性恒常性の維持に関する様々な働きがあり、癌の増殖能や浸潤能などの悪性度だけでなく、障害肝である背景肝におけるストレス応答制御への関与が予想された。我々はまず膵癌細胞株PANC-1において低酸素培養を行うと、RNAシークエンスにてTP53の上流遺伝子群の発現上昇が認められたため、TP53が活性上昇することを確認した。続いて我々は野生型p53を発現している肝癌細胞株(HepG2、Huh6、FLC4)および変異型p53を発現している肝癌細胞株(Huh7、PLC)を用いて通常培養と低酸素培養を行った。膵癌細胞株PANC-1と同様に低酸素培養を行うと、RNAシークエンスにてTP53の上流遺伝子群の発現上昇の有無を確認し、TP53が活性上昇するかどうかを確認するための実験を行っているが、初期の細胞培養によるコンタミネーション等にて細胞継代に時間を要した。現在、野生型p53を発現している肝癌細胞株(HepG2、Huh6、FLC4)および変異型p53を発現している肝癌細胞株(Huh7、PLC)の各種培養条件や低酸素下の条件を検討しつつ、実験を遂行中である。
USP10が肝細胞癌切除後の予後因子となるかを検討するために肝細胞癌の切除検体25例を用いて癌部・非癌部を抗USP10抗体を用いて免疫染色施行し、癌部、非癌部の染色の程度をスコア化した(染色された細胞の陽性率≤10%をスコア0、11-25%をスコア1、26-50%をスコア2、≥51%をスコア3)。

今後の研究の推進方策

野生型p53を発現している肝癌細胞株(HepG2、Huh6、FLC4)および変異型p53を発現している肝癌細胞株(Huh7、PLC)を用いて通常培養と低酸素培養を行い、p53、USP10、HIF-1A 、VEGFのmRNA発現量をリアルタイムPCR法で測定し、タンパク質発現量をWestern blotting法にて定量し、p53、USP10、HIF-1A、VEGFのmRNA発現量とタンパク質発現量との関係を解析する。
p53、USP10の遺伝子発現に関してsiRNAを用いた抑制を行うことで通常培養と低酸素培養下にてHIF-1A 、VEGFの遺伝子およびそのタンパク質の発現量の変化を検証する。p53、USP10のノックダウンした肝癌細胞株に肝癌関連の抗癌剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤を添加し、細胞増殖効果をMTT assay、アポトーシスの有無をWestern blotting法 (Cleaved caspase-3,-8, -9, PARP) およびAnnexin V/FITC assayで評価を行い、薬剤効果と遺伝子発現の関係性を検証する。
臨床検体の癌部に対しp53、USP10およびVEGFに対する免疫染色を、非癌部に対してはp53、USP10に対する免疫染色を行う。その結果と臨床病理学的背景と併せて多変量解析を行うことでp53、USP10、VEGFが臨床的に予後に反映されるか否かを検証する。
臨床検体の癌部・非癌部のDNAを抽出し、次世代シークエンサーによるターゲットシークエンスでTP53変異の有無を確認し、免疫染色の結果との相互の対応関係を検証する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Preoperative Therapy for Unresectable Locally Advanced Pancreatic Cancer for >6 Months Improves Prognosis After Pancreatectomy.2023

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto M, Shirai Y, Uwagawa T, Tsunematsu M, Sakamoto T, Fujioka S, Takahashi K, Onda S, Furukawa K, Haruki K, Hamura R, Gocho T, Ikegami T.
    • 雑誌名

      Anticancer Res

      巻: 43 号: 9 ページ: 4097-4104

    • DOI

      10.21873/anticanres.16599

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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