研究課題/領域番号 |
23K15496
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
清水 将来 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (00972465)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 腫瘍免疫微小環境 / 食道癌 / 人工知能イメージサイトメトリー / 腫瘍内レジデントメモリーCD8+T細胞 / 術前化学療法 / 空間的情報 / イメージサイトメトリー / 人工知能 / 腫瘍微小環境 / レジデントメモリー |
研究開始時の研究の概要 |
抗腫瘍免疫応答で重要な役割を担う腫瘍内レジデントメモリーCD8+T 細胞 (TRM) に着目し、食道癌組織標本を用いた食道癌腫瘍免疫微小環境に対し、病理診断人工知能を基盤としたイメージングサイトメトリーによる空間的情報の解析手法を用う。①食道癌病理標本における空間的解析法の確立、②食道癌手術症例の治療転帰を示す鋭敏な組織学的バイオマーカーの同定を行う、③細胞間の相互作用からCD8+TRMの分化機構の解明、の3点を目的とする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、食道癌の腫瘍免疫微小環境(Tumor immune microenvironment: TIME)の空間的情報を取得し、治療効果予測因子や長期予後予測因子となり得る組織学的バイオマーカーの探索を行うことである。独自開発の深層学習アルゴリズムに基づくイメージサイトメトリー(Deep-learning based imaging cytometry)であるCu-Cytoを用いて、術前化学療法(Neoadjuvant chemotherapy: NAC)の有無で分類した食道癌手術症例におけるTIMEの組織学的解析を行い、免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint inhibitor: ICI)の標的とされる腫瘍内レジデントメモリー(tissue-resident memory)CD8+T細胞(CD8+TRM)の局在を明らかにする。 Cu-Cytoを用いた病理組織切片の解析では、人間による顕微鏡の観察では測定困難なものをデータ化できることも特徴である。たとえば細胞の座標情報をもとに得られる細胞間距離が挙げられる。このような空間的情報のデータをもとに、TIMEの細胞間相互作用を評価するパラメータとして利用や、CD8+TRMの分化過程に寄与する細胞の検討、CD8+TRMの腫瘍周囲への集簇・腫瘍細胞への侵入の程度が評価可能になる。 TIMEの評価によりCD8+TRMの分化条件や局在を明らかにしたのち、同条件を再現する切片を用いて空間トランスクリプトーム解析を行う。TIMEに発現する遺伝子を網羅的に解析することで、細胞の位置情報とTIMEの遺伝子発現を統合して検討できる可能性がある。TIME内の細胞に働きかけ抗腫瘍免疫を促進する遺伝子の探索や、薬物治療の新たなターゲットの探索に繋がる研究になり得る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
深層学習アルゴリズムに基づくイメージサイトメトリーであるCu-Cytoのアノテーション作業を行い、食道癌のプログラムが完成し、サンプルの染色を行っている段階である。Cu-Cytoでの解析所見は、病理医による顕微鏡での評価所見に大きく矛盾はしておらず、一定の精度で食道癌TIMEを構成する細胞の識別は可能である。CD8+TRM(本研究ではCD103+CD8+T細胞として定義)の検出精度は90%以上を達成しており、他の細胞種においても概ね90%台の精度を確認できている。 転移学習の進行と並行し、共局在指標(co-localizasion index: CLI)の解析を開始している。これは、Cu-Cytoで得られる細胞間距離をもとに、細胞間相互作用の数値化を試みたものである。現在、腫瘍細胞とCD8+T細胞の組み合わせにおいて、CLI高値群で良好な無再発生存期間を示す結果が得られており、今後、TIMEに存在する多様な細胞の多様な組み合わせで評価予定である。現在識別可能な10種類以上の細胞について、ICIの標的とされるCD8+TRMも含めて様々な組み合わせでCLIを算出し、治療効果の評価指標として、より適した組み合わせを自動的に評価可能なプログラミングの構築を目指している。そのほか、細胞検出アルゴリズムやその検出精度管理について、報告準備中である。 全体の進捗状況としてはやや遅れが生じているが、転移学習の精度向上と解析基盤の構築や自動化を進めることで、研究の加速が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
Cu-Cytoによる食道癌TIME解析の計画は、ある程度順調に進行している。また、Cu-Cytoの細胞識別精度に関する客観的評価についても、学習段階ごとの細胞識別精度評価を自動的に行えるシステムの構築が進んでおり、近日中に報告予定である。 Co-localization index (CLI) の解析については、現在、TIME内に存在する多様な細胞について、自動的に多様な組み合わせのCLIを算出可能なプログラムを作成中である。このプログラムが完成すれば、TIMEにおける様々な細胞間相互作用を網羅的かつ迅速に評価することが可能となり、治療効果予測や予後予測に有用なバイオマーカーの同定に寄与すると考えられる。
|