研究課題/領域番号 |
23K15497
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
宍戸 裕二 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (00812702)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 食道癌 / フェロトーシス / 薬剤耐性癌細胞 / GPX4 / FSP1 / 5-アミノレブリン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、「食道癌でのフェロトーシス誘導におけるGPX4、FSP1の相互作用メカニズムを解明し、5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた薬剤耐性癌細胞に対する治療応用を目指す」ことである。 5-ALAはGPX4を介したフェロトーシス誘導により食道癌に対して抗腫瘍効果を発揮するが、薬剤耐性腫瘍細胞に対する効果は限定的であった。その原因として、GPX4とは独立してフェロトーシス抑制に働くFSP1の関与が考えられる。 本研究では、フェロトーシス誘導におけるGPX4、FSP1の相互作用機序を解明し、5-ALAを用いた新たな食道癌治療の可能性について精査する。
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研究実績の概要 |
まず当初の計画であった5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた実験では、想定していたような実験結果の再現性が得られなかった。これは先行研究とは5-ALA入手方法が異なる(先行研究では共同研究企業から無償提供いただいていた)ことが大きく影響していると思われ、ひとまず5-ALAを使用しての研究継続は断念し、「薬剤耐性食道癌におけるフェロトーシス関連遺伝子(GPX4、FSP1)発現の評価と治療ターゲットとしての意義」を検証する方向で研究を進めた。 まずは、術前化学療法(NAC)を施行された食道癌切除検体(n=97)で免疫染色を行い、化学療法の効果とGPX4、FSP1発現との関連性について検証した。その結果、GPX4、FSP1いずれにおいても発現陽性症例では有意に化学療法の効果が不良であった。また、GPX4、FSP1陽性症例は陰性症例と比較し予後も不良であった。 また、NAC施行前の生検検体が評価可能な47例において、NAC施行前後でのGPX4、FSP1発現の変化についても検証した。その結果、GPX4では21例(45%)、FSP1では23例(49%)と約半数の症例でNAC前後でのGPX4、FSPP1の発現変化がみられた。また、NAC前→後のGPX4、FSP1発現変化がそれぞれ陽性→陽性をA群、陰性→陽性をB群、陽性→陰性をC群、陰性→陰性をD群と定義すると、GPX4、FSP1いずれにおいてもA、B、C、Dの順に有意に化学療法の効果が不良で、予後も不良であった。 上記の結果から食道癌臨床検体においてGPX4、FSP1は化学療法の薬剤耐性に関与しており、NAC施行例における予後不良因子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも記載した通り、当初予定していた5-ALAを使用しての研究継続は断念することとしたため、研究計画で2023年度に施行を予定していた、1)5-ALA投与よるGPX4、FSP1発現変化の確認、2)GPX4、FSP1相互作用メカニズムの解明については遂行できていない。 しかしながら、代用実験として食道癌臨床検体を用いてGPX4、FSP1発現が薬剤耐性に関与していることを証明することができた。したがって、2024年度に施行予定の3)薬剤耐性食道癌細胞株での実験に対する臨床的裏付けはできている。 2024年度は、まず3)の実験に使用するのに適切なGPX4、FSP1発現をしている食道癌細胞株の選定から始める必要があるため、やや遅れてはいるものの概ね2024年度中に施行する予定の実験内容を終了することは可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず複数の食道癌細胞株の中からGPX4、FSP1それぞれの低発現株を選定する実験から開始する。既にThe Human Protein Atlasのデータベースを用いて数株を候補として挙げており、これらの株を用いてReal-time PCR法によるRNA発現とWestern blot法による蛋白発現をそれぞれ確認する。 これらの実験で最低でもGPX4高発現・FSP1低発現の株とGPX4低発現・FSP1高発現の株、合計2株を選定し、さらに状況に応じて追加候補株も用意しておく。 次に薬剤耐性株の作成に移る。方法としては選定した2株においてそれぞれシスプラチン、5-FUの薬剤感受性を確認し、その後ステップワイズ法にてそれぞれの耐性株(合計4株の耐性株)を作成する。作成した耐性株において親株と比較し、GPX4、FSP1発現が増強することを確認する。ここで仮説通りの結果が得られなかった場合は追加候補の株を用いて同様の実験を行う。それでもうまくいかない場合は、元々のGPX4、FSP1発現が高い細胞株を薬剤耐性株、低い株を通常株と想定して以後の実験を進める。 続いて、薬剤耐性株ではGPX4、FSP1を阻害することでフェロトーシスが誘導され、より強力な細胞死が起こることを検証する。具体的には薬剤耐性株とそれぞれの親株にGPX4阻害剤(RSL3)、FSP1阻害剤(iFSP1)を投与し、親株と比較して薬剤耐性株では細胞死効果が高いことを確認する。またその細胞死効果はフェロトーシス阻害剤(Lipro-1)でキャンセルされるが、アポトーシス阻害薬(Z-VAD)やネクローシス阻害薬(Necro-1)ではキャンセルされないことを確認し、細胞死がフェロトーシスによって生じていることを証明する。
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