研究課題/領域番号 |
23K15519
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
原田 仁 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (70771517)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | 胃癌 / 微小遺残病変 / 術後サーベイランス / エクソソーム / マイクロRNA / 再発 / 涙液 / Liquid biopsy / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、Liquid biopsy による胃癌術後症例の早期再発検出法の開発を目的とし、 患者検体の採取および解析手段として涙液由来エクソソーム検出法 (TearExo 法) を用いる。本手法は検体集積が簡便、かつエクソソームを確保・検出するための抗体が変更可能なため病態特異的にエクソソーム解析が可能、などの利点がある。涙液による簡便な検査方法を用いて胃癌由来エクソソームを検出し、胃癌術後の再発を早期に診断する。予後改善を目指した次世代型集学的サーベイランスの構築を試みる。
|
研究実績の概要 |
本研究は、胃癌術後患者の再発を早期に発見するための新たな検査法の開発を目的とし、Liquid biopsy の一種である涙液由来エクソソーム検出法(TearExo 法)を用いる。 TearExo 法は、涙液から胃癌に特異的なエクソソームを検出する手法であり、いくつかの利点を有する。まず、涙液の採取は非侵襲的で患者の負担が少ない。また、エクソソームの捕捉・検出に用いる抗体を変更することで、様々な病態に特異的なエクソソームを解析できる柔軟性がある。 本研究では、TearExo 法を用いて胃癌患者の術後経過を追跡し、再発の早期兆候を捉えることを目指す。具体的には、術後定期的に涙液を採取し、胃癌由来エクソソームの量的・質的変化を解析する。これにより、従来の画像診断や腫瘍マーカー検査では検出が困難な微小転移や再発巣を、より早期に発見することが可能になると期待される。本研究の成果は、胃癌術後患者の予後改善に寄与すると考えられる。TearExo 法を中心とした次世代型の集学的サーベイランスシステムを構築することで、再発の早期発見・早期治療が可能となり、患者のQOLの維持と生存期間の延長が期待できる。また、本手法は胃癌以外の様々な癌腫への応用も可能であり、癌診療全体の発展に資する可能性を秘めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、胃癌術後再発の早期検出法の開発を目的とし、涙液由来エクソソーム検出法(TearExo法)を用いた患者検体の採取および解析手段の確立を目指している。TearExo法は、症例検体集積が簡便であり、迅速な前向き研究の実施が可能である。また、エクソソームを確保するための抗体は変更可能であるため、病態・患者特異的に最適化したエクソソーム解析が可能である。転移臓器別抗体および患者個別抗体によるエクソソームを検出することで、個別検出を目指した次世代型精密医療の基盤構築を試みている。 研究の進捗として、胃癌細胞株を用いたエクソソーム検出に成功しており、microRNA成分の検出による確認を行っている。これらAは、胃癌の進展や転移に関与していることが報告されており、エクソソーム内のRNA成分が胃癌の病態を反映している可能性が示唆される。すでに、約20例程度の腹膜播種症例の腹水及び腹腔洗浄液のエクソソーム検出及びマイクロRNA解析を初めており、この成果が本研究の基盤をなすと考えられる。現在は、エクソソーム検出の条件設定の詳細を行っている段階であり、最適な抗体の選択や検出感度の向上などに取り組んでいる。胃癌切除例に対するエクソソーム検出例の集積と観察研究として、術前、術後での涙液採取を行う予定である。長期的な経過観察を行うことで、再発や転移との関連性をより明確に評価することが可能となる。 全体としては、研究の進捗に難渋している。エクソソーム検出法の確立や、腫瘍細胞と免疫細胞の相互作用の解明など、いくつかの課題に直面しているが、これらを解決することで、胃癌術後再発の早期検出法の開発に大きく前進することが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、胃癌の腹膜播種症例と原発巣切除症例の腹水(洗浄細胞診)からのエクソソーム検出およびマイクロRNA解析を優先的に進める。腹膜播種は胃癌の予後を左右する重要な因子であり、その早期検出は治療方針の決定に大きく影響する。腹水中のエクソソームを解析することで、腹膜播種の分子メカニズムの解明や新たなバイオマーカーの同定が期待される。 具体的には、腹膜播種症例と原発巣切除症例の腹水サンプルを収集し、エクソソームを分離・精製する。次に、エクソソーム内のマイクロRNAをプロファイリングし、両者の比較解析を行う。腹膜播種に特異的なマイクロRNAの同定や、それらの機能解析を通じて、腹膜播種の分子メカニズムの解明を目指す。さらに、同定されたマイクロRNAの診断および予後予測マーカーとしての有用性を評価する。 また、胃癌切除例についても、術前、術後、定期的な経過観察時点での涙液サンプルの採取を早急に開始する。涙液は非侵襲的に採取可能であり、エクソソームの豊富な供給源であることから、再発の早期検出に有望なツールと考えられる。採取した涙液サンプルからエクソソームを分離し、マイクロRNAを含む分子プロファイリングを行う。術後経過との関連性を解析することで、再発の予測マーカーの同定を目指す。 これらの取り組みを通じて、胃癌の腹膜播種および術後再発の早期検出法の開発を加速し、患者の予後改善に貢献することを目指す。腹水および涙液というユニークな検体を用いたエクソソーム解析は、胃癌の病態解明と新たな診断・治療ターゲットの同定に寄与すると期待される。
|