研究課題/領域番号 |
23K15528
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中出 裕士 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90745796)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ユビキチン・プロテアソームシステム / 胃癌 / ユビキチンリガーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
ユビキチン・プロテアソームシステムはタンパク分解のみならずDNA修復や細胞周期進行に関わるとされる.ユビキチン・プロテアソームシステムの中心的役割を担うE3ユビキチンリガーゼの一つであるCullin4A(CUL4A) という分子に注目した.CUL4Aの発現と臨床病理学的因子や予後との関連を明らかにし,CUL4A活性阻害による抗腫瘍効果の検討,CUL4A発現と抗癌剤および放射線感受性との関連及び遠隔転移や播種転移抑制効果の検討を行う.これらの結果をもとに,胃癌を中心とした難治性消化器癌の進展機序を解明し,新規治療薬としての可能性を含めた臨床応用可能な新たな集学的治療戦略の開発を目的とする.
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研究実績の概要 |
我が国における癌患者数および癌死亡数は増加傾向にあり、特に難治性消化器癌の一つである胃癌は2020年の部位別癌死亡数で肺癌に次いで2番目に多い。発見・診断時に遠隔転移や局所進行のため切除不能な症例も多く、根治手術後も再発頻度が高く、再発後の治療は抵抗性が高く予後が悪い。このため、新たな治療法の開発が望まれる。近年、ユビキチン・プロテアソーム系を標的とした治療が注目されている。ユビキチン修飾系はタンパク質の翻訳後修飾系であり、細胞周期やシグナル伝達、転写調整などを制御している。ユビキチン修飾系の異常は様々な疾患や発癌と関連しており、特に癌の浸潤、転移、再発に関与することが示されている。E3ユビキチンリガーゼであるSCF複合体の構成分子Skp1やβ-TrCP、FBXW7などの発現異常が様々な癌で確認されており、これらの異常は癌の悪性度や薬物治療抵抗性に関連している。
我々の研究室では、SCF複合体の構成分子であるCUL4Aに注目している。食道癌組織では正常組織に比べてCUL4Aが過剰発現しており、高発現は腫瘍の壁深達度、静脈侵襲、リンパ節転移、遠隔転移と有意に関連していることを確認した。CUL4A高発現腫瘍は5年全生存率や5年疾患特異的生存率が有意に予後不良であり、CUL4A過剰発現は食道癌の進展に深く関与している。また、CUL4A高発現は独立した予後不良因子であり、臨床的意義を有することが確認された(Nakade H, et al. 2020)。これらの結果から、CUL4Aは消化器癌において腫瘍増殖、浸潤、転移に重要な役割を担い、治療抵抗性の一因となるため、新たな治療標的となりうる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
癌細胞の浸潤アッセイや細胞遊走アッセイにおいて、技術的な習熟に時間を要したため、実験が遅れている。そのためこの実験系の後に予定していた今年度中に予定していたCUL4A過剰発現ベクターを用いた癌細胞での実験(増殖能、浸潤能、遊走能への影響の検証)も未施行の状況である。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞浸潤アッセイや細胞遊走アッセイを実施し、浸潤能や遊走能に与える効果を検証する実験は現在進行中である。ある程度見通しがついた時点で、同時並行的にベクターを用いてCUL4Aを過剰発現させた癌細胞を使用し、CUL4A過剰発現が腫瘍の増殖能、浸潤能、遊走能に与える影響を検証する実験を開始し、遅れを取り戻す予定である。
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