研究課題/領域番号 |
23K15531
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
谷合 智彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60961860)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 膵臓癌 / 肝転移 / リン脂質代謝 / 酸性セラミダーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
いまだ予後不良な膵臓癌において、転移浸潤の機序を解明し、新たな治療戦略を立案することが喫緊の課題である。特に膵臓癌肝転移は多くの症例で認めるにもかかわらず、その分子生物学的機序は十分に解明されておらず、詳細な解明が望まれている。 一方、リン脂質は細胞表面のシグナル伝達の受容体発現、および細胞内シグナル伝達に関与する。また、細胞接着の観点からも癌の増殖、浸潤、転移に関与することが報告されており、癌細胞におけるリン脂質の役割についても詳細な解析が望まれている。 本研究における目的は、膵臓癌肝転移の分子生物学的機序をリン脂質代謝の側面から明らかにし、膵臓癌に対する新たな治療戦略を確立することである。
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研究実績の概要 |
実験に使用する細胞株を決定するため、当研究室で保有しているヒト膵癌細胞株4種 (MIA PaCa-2、PANC-1、PATC66、BxPc3)について酸性セラミダーゼの蛋白発現量をwestern blotで評価した、細胞株によって発現量はさまざまであった。最も発現量の多いPANC-1を中心に実験を進める方針とした。 まず、si-RNA法によって、PANC-1に対して酸性セラミダーゼノックダウンを行い、western blot、酵素活性の測定により、酸性セラミダーゼが確実にノックダウンされていることを確認した。 続いて、オリジナル株と酸性セラミダーゼノックダウン株を電子顕微鏡にて形態学的特徴を比較すると、ノックダウン株では細胞間間隙が顕著であり、細胞間接着が脆弱化している可能性が示唆された。また、細胞間接着および上皮間葉転換に関与するEカドヘリンの発現をwestern blotで評価したところ、ノックダウン株で発現低下を認めており、この結果からも細胞間接着の脆弱化および上皮間葉転換の亢進が示唆された。 さらに、酸性セラミダーゼが細胞内シグナル伝達に及ぼす影響について評価するため、細胞膜受容体であるEGFRおよびその下流の細胞内シグナル伝達である、Akt、GSK-3βについてwestern blotで評価したところ、ノックダウン株においていずれの蛋白発現量も増加していた。以上の結果から、酸性セラミダーゼノックダウンにより、細胞内シグナル伝達が亢進し、細胞増殖、アポトーシスに寄与する可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していたC57BL/6マウス由来の膵癌細胞株KPCに対して、酸性セラミダーゼノックアウト細胞株を作製する工程において、ノックアウト株の作製に時間を要しており、それにより動物実験及びその摘出腫瘍から網羅的解析を行う工程が遅れている。現在ノックアウト株の作製について調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、ヒト膵癌細胞株における酸性セラミダーゼノックダウンによるシグナル伝達経路への影響については順調に解析が進んでいる。現在はwestern blotによる評価が中心であるが、今後RT-qPCR、フローサイトメトリーを用いた評価を追加で行っていく方針である。 動物実験については、酸性セラミダーゼノックアウト細胞株の作製ができ次第、進めていく。また、ノックアウト細胞株が完成した時点で、in vitroの実験系についてもノックアウト細胞株を用いて再度検証する。
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