研究課題/領域番号 |
23K15532
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
齊藤 卓也 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (40763272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | CTC / Circulating Tumor Cells / 膵癌 / 食道癌 / 血液中循環癌細胞 / 術前化学療法 / Circulating tumor cell |
研究開始時の研究の概要 |
蛍光顕微鏡によらず、免疫染色により光学顕微鏡で診断できる全く新しい血液中循環癌細胞(CTC; circulating tumor cell)検出デバイスを用いて、術前化学療法が行われる食道癌、膵癌の消化器癌患者を対象として、術前化学療法前後でのCTCを経時的に測定する。そして、CTCの動態と化学療法との関連や薬剤感受性評価等との関連等を明らかにし、治療効果のモニタリングとしてのCTCの診断的意義を確立することである。
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研究実績の概要 |
これまでのCTCと化学療法に関する研究はCTCの検出装置が高価なこともあり、治療によるCTC数の変化などの評価は、治療前と治療後の概ね2回程度しか検討されてこなかった。我々はこれまでにサイズで分離したCTCをスライドグラスに転写し、サイトケラチン免疫染色と通常の光学顕微鏡で検出できる簡便かつ低コストなCTC検出装置を開発してきた。また我々はCTC数を計測可能な乳癌、肺癌、胃癌など各種ヒト癌の担癌ヌードマウスモデルを作成、化学療法後に経時的にCTC数を測定し、予想に反してCTC数が減少ではなく、逆に一過性に増加することを見出し報告してきた(1)。本研究の目的は上記動物実験から示唆される治療に伴うCTC数のダイナミックな変化の有無を検討することにある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は倫理委員会の承認を得て、まず術前化学療法が行われた膵癌と食道癌患者から治療前、治療中(複数回)、治療後(手術前)の末梢血を採取し、治療に伴うCTC数の変化を経時的に評価した。膵癌患者に関しては当初8名の患者を登録したが、うち2例は化学療法の中止及び転院のため測定できず、実質6例についてCTC数をほぼ経時的に測定した。6名中3例で初回(1〜2回投与)化学療法後にCTC数が上昇する傾向が認められた。このうち3例では治療前の0個付近から大小のクラスターからなるCTC数;11個、22個、45個に達する1過性のピークが認められた。この結果は上述のマウスCTC実験の結果とほぼ一致する。術後の病理学的検討ではCTC数の一過性の増加が見られた症例はStageIIとStageIVで、化学療法の効果判定はいずれもPRであり、マウス実験の結果と矛盾しない結果であった。一方、食道癌患者2名に関してはこれまでのところ化学療法後に膵癌患者のような1過性のCTC数増加傾向は見られていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討では膵癌の一部(3/6)の症例で初回化学療法後にCTC数の一過性の増加傾向が認められた。マウス実験の病理学的解析ではCTC数の一過性増加のピーク時は原発腫瘍では細胞分裂が停止、腫瘍細胞の壊死がピークに達し、さらに腫瘍血管も破綻するものの、組織の再生修復機序がまだ起こっていない時期に一致する。これら一過性増加の見られた膵がん症例の化学療法の効果はいずれもPRであった。これらの点に関しては今後切除標本の詳細な病理学的検索等を行いCTC増加機序の解析を行う予定である。今回の膵癌における症例は数がまだ少なく、また食道癌では現時点で一過性増加傾向は認められないなど確定的なことが言える段階ではないが、少なくとも膵癌に関しては症例ごとに病期、組織型や薬剤感受性等が異なる臨床例においても初回化学療法後にCTC数が一過性に増加し、血液中に腫瘍細胞が動員される可能性が示唆される。
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