研究課題/領域番号 |
23K15552
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55040:呼吸器外科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
熊田 早希子 東北大学, 加齢医学研究所, 分野研究員 (30964499)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | LILRB3 / 肺癌 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 非小細胞肺癌 |
研究開始時の研究の概要 |
肺癌の死亡率(人口10万対)は男性で1位、女性で2位に位置し、増加している。T細胞免疫チェックポイント阻害薬は、癌細胞が発現する免疫逃避シグナルを伝達する分子を阻害することで抗腫瘍効果を示す画期的な癌治療薬として登場したが、実際に使用されると奏功率は50%以下にとどまり、依然残る不応答患者を救済する方法の開発が急務である。 本研究では、この不応答の原因が、B3を含むミエロイド系免疫チェックポイントにあると考え、肺癌の腫瘍免疫制御におけるB3の重要性を検討する。将来的には新規薬(B3阻害薬)の開発によって、従来の薬物療法では効果の得られない肺癌患者に対する治療選択肢の拡大、治療成績の向上を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ミエロイド系細胞に発現するLeukocyte Immunoglobulin-like Receptor (LILR)B 分子群であるLILRB3(以下B3)と、肺癌における腫瘍免疫制御の関わりを明らかにすることを目的とした基礎的ならびに臨床病理学的研究である。 2023年度はがん微小環境におけるB3の発現評価に焦点を当てて研究を進めた。具体的には、肺腺癌、扁平上皮癌の切除標本を、我々が独自に開発したB3抗体を用いて免疫染色を施した。条件設定を十分に行なったのちに免疫染色を試みたが、肺癌組織中にはB3陽性リンパ球をほとんど確認できなかった。一方、同時に行なった乳がん組織、膵がん組織には評価可能なB3陽性リンパ球が確認された。乳がんについては、染色強度を上げたいという理由から染色条件を変更していたため、これと同じ条件で肺癌組織スライド20症例を試験的に染色してみたが、結果はバックグラウンドも強く染まってしまい、リンパ球の評価をすることはできなかった。 この結果を受けて、乳がん組織、膵がん組織に比べて、肺癌組織は極めてB3発現リンパ球が少ない対象であると結論づけた。臓器別に発現度が異なる理由について、今のところ手術前の治療の有無が関係しているのではないかと考えている。すなわち、肺癌手術患者の多くは早期肺癌であり術前未治療で手術を行なっているのに対して、乳がんや膵がんではほとんどが術前補助化学療法を受けている。この前治療の影響が、血中がん抗原の増加などがん微小環境に変化をもたらし、B3陽性リンパ球の発現を促している可能性がある。 乳がんに関してB3陽性リンパ球と予後との関連についても評価し、B3陽性リンパ球の発現が高い群は、低い群に比べて予後良好であるという結果を得た。これは以前から我々が研究しているB4の発現と予後との関連と逆の結果であり、現在さらに分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌組織について、我々が予測した結果とは異なるものではあったが、組織検体の評価は終了し、概ね本年度の研究目標は達成している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に行った肺癌組織のB3免疫染色については我々の仮説と異なる結果が得られたことから、肺癌組織におけるB3の機序についてin vitroの実験や他免疫染色で検討する必要がある。
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