研究課題/領域番号 |
23K15563
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55040:呼吸器外科学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
新井 信晃 杏林大学, 医学部, 助教 (20828123)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | NOGマウス / FACS / 悪性胸膜中皮腫 / 胸水細胞診 / フローサイトメトリー / 液状化細胞診 / 細胞周期 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性胸膜中皮腫は予後不良な疾患であるが、適切な症例選択で治療介入により長期生存も望める。悪性胸膜中皮腫の診断には高侵襲な胸膜生検が一般的であるが、腫瘍の一部分での診断によることから、腫瘍全体の組織型の正確な診断に至らず最適な治療計画につながらない場合がある。本研究は低侵襲に採取できる悪性胸水を用いて、細胞周期に着目したフローサイトメトリー分析を行い、組織型鑑別を可能にする診断法の確立を目的とする。そこで悪性胸膜中皮腫の胸水のマウスモデルを用い、液状化検体細胞固定と細胞周期に着目したフローサイトメトリー分析手法を確立することを計画した。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、悪性胸膜中皮腫(MPM)の悪性胸水から腫瘍細胞を検出し、上皮型・二相型・肉腫型の組織型を区別する診断法を確立することである。2024年3月現在、以下の進捗がある。 理化学研究所の細胞材料開発室より中皮腫細胞株4種類を入手し、当施設の培養室で安定的な培養ができるよう環境整備した。また、SCIDマウスの選定を完了し、胸腔内移植の準備を整えたが、予定していたFACSであるLC-1000(シスメックス社)が販売中止となり、解析が不可能となった。このため、BD社製FACSを選定し、実験プロトコールの改定と条件の最適化を進める必要が生じ、研究がやや遅れている。 中皮腫細胞の培養・移植は、ヒト組織の生着性が良好なNOGマウスを用いて実施する方針を採用し、動物実験計画書は承認された。また、FACS装置の再選定に伴い、DNA染色色素や悪性胸膜中皮腫のマーカーとなる細胞膜抗体の候補選定を終了し、2025年度初めに購入予定である。 今後の推進方針として、まず新たなFACS装置の運用についての条件検討を早急に行う。次に、NOGマウスを用いた中皮腫細胞の移植実験を計画通り進める。また、臨床検体を用いた解析を2024年度以降に開始し、臨床環境でのデータを基に診断法の有用性を検証する。形態学的な評価を深めるため、電子顕微鏡で胸水浮遊中の中皮腫細胞を観察し、微細構造や異常形態を捉える実験系を追加する。 教室全体で定期的なミーティングを行い、進捗状況の共有と問題点の早期解決を図る。研究成果を学会や論文で発表し、フィードバックを受けながら研究内容の改善を行う。こうした取り組みで診断法の確立を推進し、最終目標である臨床応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況としては、まず研究に必要な中皮腫細胞の入手と細胞培養環境の整備を行い、胸腔内移植を行うSCIDマウスの選定を完了した。しかし、予定していたFCM装置LC-1000(シスメックス社)が販売中止となり、臨床において今後当該機で胸水検体を解析することが不可能となった。このため、新たに細胞周期を検出できるFACS装置を再選定し、実験プロトコールの改定を行う必要が生じた。これにより、実験条件の再検討が必要となり、研究の進捗がやや遅れている状態である。
中皮腫細胞は理化学研究所の細胞材料開発室より計4種類の中皮腫細胞株を入手した。培養室は当施設においてソフト・ハードの面で整備を進め、2024年4月現在で安定的な培養が可能な状態となった。また、公益財団法人実中研と胸腔内移植を行う最適なマウスについて協議し、よりヒト組織の生着性が良好なNOGマウス(正式名:NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/ShiJic)を用いて、ヒト中皮腫培養細胞の移植実験を行う方針となった。
現在、当施設の実験動物施設部門と協議し、マウスの購入・搬入や実験プロトコールの改定を進めている。動物実験計画書は当該委員会で審議・承認された。また、細胞周期を解析するため当初想定していたLC-1000の代替として当施設のFACS部門で運用しているBD社製FACSを用いることとなった。DNA染色色素、悪性胸膜中皮腫の陽性・陰性マーカーとなる細胞膜抗体の候補選定は終了した。また、FCMの変更に伴い実験プロトコールの改定と実験条件の最適化が進行中である。臨床検体を用いた解析は、2024年度内には適当な検体を入手できなかったため、2025年度以降に施行する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針として、まず新たなFACS装置の運用についての条件検討を早急に行う。具体的には、BD社製FACSを用いて細胞周期を高精度に解析できるように、実験プロトコールの改定と実験条件の最適化を進める。この段階で得られるデータを基に、上皮型、二相型、肉腫型の各組織型を正確に区別するための指標を確立する。 次に、NOGマウスを用いた中皮腫細胞の移植実験を計画通りに進める。これにより、よりヒト組織に近い環境でのデータを収集し、実験結果の信頼性と再現性を向上させることが期待される。さらに、臨床検体を用いた解析を2024年度以降に本格的に開始するための準備を進める。これにより、実際の臨床環境におけるデータを基に、実験結果の有用性を検証する。 細胞診断学(形態学)的な評価を深めるため、当施設において使用可能な電子顕微鏡で胸水浮遊中の中皮腫細胞を観察・解析する。これにより、細胞の微細構造や異常形態を高精度に捉えることができ、診断精度の向上につながる。 これらの方針と得られた実験結果に基づき、3~4週間に1回程度の頻度で当教室全体でミーティングを行い、進捗状況の共有と問題点の早期解決を図る。また、研究成果を学会や論文で発表し、フィードバックを受けながら研究内容の改善を行う。こうした取り組みにより、悪性胸膜中皮腫の診断法の確立に向けた研究を着実に推進し、最終的な目標である臨床応用を目指す。
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