研究課題/領域番号 |
23K15585
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
松田 祐典 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70570191)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 帝王切開 / 出産後回復 / 医療品質改善 / ERAS / 産科麻酔 |
研究開始時の研究の概要 |
出産後の回復遅延は,育児の妨げとなり,母体の社会復帰を遅らせる.さらに,母児の愛着形成やメンタルヘルスへ悪影響を及ぼすため,速やかな出産後回復は,重要な課題である. しかし,回復は総合的に評価される指標で,客観的な評価は難しい.本研究ではObstetric Quality of Recovery (ObsQoR)を利用して,帝王切開術後の回復を可視化し,Enhanced Recovery After Surgery (ERAS)を実施することによって,患者の回復促進効果を数値として評価することで,多くの施設におけるERAS実装を促す.
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研究実績の概要 |
帝王切開出産後回復の評価に使用されるObstetric Quality of Recovery (ObsQoR)の日本語版の妥当性確認研究について、信頼性と有効性を証明する論文を発表した(Mazda Y, et al. AJOG Glob Rep. 2023; 3:100226)。この研究により、ObsQoRが日本の患者にも適用可能であり、臨床評価ツールとしての有効性が確認された。これにより、帝王切開後の回復評価がより正確に行えるようになり、臨床現場での診療の質が向上した。 第二段階の研究として、術後回復力強化(Enhanced Recovery After Surgery, ERAS)の一環で導入された新しい帝王切開術後鎮痛プランの臨床効果をObsQoRで測定した。この研究では、新しい鎮痛プランの導入が患者の回復状況にどのような影響を与えるかを詳細に評価し、術後の痛み管理が従来の方法に比べて大幅に改善され、患者の早期回復が促進されることを確認した。具体的には、術後の痛みの軽減や回復時間の短縮、早期の食事再開が可能になったことが明らかになった。 さらに、帝王切開術後の睡眠と産後うつの関連についての後方視的に調査を行い、その結果をSOAP 55th Annual Meeting (New Orleans, Louisiana)で発表した。この研究では、当日の睡眠と長期的なメンタルヘルスの関係について新たな仮説を検証し、出産後回復の一環としての睡眠の重要性を示した。 これらの成果は、帝王切開後の回復プロセスを科学的に明らかにし、臨床現場における患者ケアの質向上に寄与するものである。今後も引き続き研究を進め、より良い医療提供を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、研究の基盤となるObstetric Quality of Recovery (ObsQoR)の日本語版の妥当性確認研究が論文かされたことが大きい。この研究により、ObsQoRが日本の患者にも適用可能であり、信頼性と有効性が確認された。これにより、後続の研究において一貫した評価が可能となり、データの質が向上できる。 次に、第二段階の研究である新しい帝王切開術後鎮痛プランの導入とその評価も順調に進んでいる。新しい鎮痛プランは、術後の痛みを効果的に管理し、妊婦の出産後回復を促進することが示された。これにより、術後の回復プロセスが改善され、患者の満足度も向上した。具体的なデータに基づいた改善が行われたことで、研究の信頼性が高まっている。 また、帝王切開術後の睡眠と産後うつの関連についての調査も順調に進んでいる。この調査では、当日の睡眠と長期的なメンタルヘルスの関係について新たな知見が得られた。学会での発表を通じて、研究成果が広く認知され、他の研究者や医療機関からのフィードバックを受けることができた。これにより、研究の質がさらに向上し、新たな研究の方向性が見えてきた。 さらに、多職種連携チームの効果的な協力も、研究の順調な進行に寄与している。産科麻酔科、産婦人科、看護部、薬剤部、栄養部、医務課が一体となって取り組むことで、各専門分野の知見が集約され、包括的なケアが提供できるようになった。これにより、患者の回復プロセスが最適化され、研究の進行が円滑に進んでいる。 これらの理由から、2023年度の研究は概ね順調に進行している。今後もこの調子で研究を進め、より良い医療提供を目指していく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
現行のObsQoRの日本語版の妥当性確認研究を基盤として、さらなるデータの収集と分析を進める。これにより、異なる患者群や状況におけるObsQoRの適用性を検証し、評価の精度を高める。多施設共同研究を通じて、より広範なデータを収集し、統計的な信頼性を向上させる。 次に、帝王切開におけるERAS実装に向け、食事の開始時期についても回復に与える影響を詳細に評価し、最適なタイミングを特定するための研究を進める。早期の食事再開が回復を促進する可能性があるため、この点についての具体的なデータを収集し、分析する。 さらに、帝王切開術後の睡眠と産後うつの関連についての研究を深化させるため、前向きの観察研究を行う。これにより、得られた知見の一般化可能性を高め、臨床的な適用範囲を拡大する。新たに得られたデータを基に、介入プログラムを開発し、臨床試験を通じてその効果を検証する。 これらを実行するために、研究チーム内の各専門分野の連携をさらに強化し、情報共有と協力体制を充実させる。定期的なミーティングを開催し、研究の進行状況や課題を共有し、迅速な問題解決を図る。また、収集したデータを効率的かつ安全に管理するためのシステムを整備する。データ解析においては、先進的な統計手法やデータサイエンスの技術を活用し、精度の高い解析を行う。そのために統計の専門家とも連携を密におこなっていく。これらの方策を実施することで、研究の質をさらに高め、帝王切開後の患者ケアの改善に寄与することを目指す。
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