研究課題/領域番号 |
23K15637
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
廣見 太郎 東京医科大学, 医学部, 客員研究員 (70970614)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / 血管リモデリング / 糖タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
腹部大動脈瘤(AAA)は慢性炎症や細胞外基質のリモデリングにより壁が脆弱化し血管壁が瘤状に進行性に拡大する疾患である。研究代表者は、PGE2受容体であるEP4がAAAの血管平滑筋細胞に過剰に発現し、その活性化がサイトカイン分泌を亢進させることで、免疫担当細胞の浸潤を誘導してAAAを増悪させることを見出した。一層のAAA病態解明のため網羅的遺伝子解析によりEP4刺激で最も増加する細胞外基質としてバーシカンを見出した。本研究では、遺伝子改変マウスとヒトAAA組織を用いて①バーシカンの過剰産生がAAA進行に果たす役割を解明し、②バーシカン産生を阻害することでAAA進行が抑制できるかを検討する。
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研究実績の概要 |
ヒト腹部大動脈瘤(AAA)を複数の患者から収集した。これらのAAA検体を器官培養すると、複数患者のAAAからバーシカンが分泌されていた。 血管平滑筋特異的にEP4受容体を過大発現させたマウスから大動脈血管平滑筋細胞を単離した。この細胞を利用して血管平滑筋細胞がプロスタグランディンE受容体EP4(EP4受容体)シグナルを介してヒアルロン酸、バーシカンを産生させることを見出した。血管平滑筋細胞におけるEP4シグナルはバーシカン、ヒアルロン酸複合体に富んだ細胞外基質を形成することを顕微鏡下に発見した。
血管平滑筋特異的にEP4受容体を過大発現させたマウス(EP4-Tgマウス)を使用してAAA疾患モデルマウスを作製した。腹部大動脈瘤(AAA)モデルマウスの大動脈血管平滑筋層においてバーシカンとヒアルロン酸の発現が増大していることを見出した。また、Vcanfl/+;SM22CreでAAAモデルマウスを作製するとSM22Creマウスと比較してAAA径が縮小した。血管平滑筋のEP4シグナルが産生するバーシカンはAAAの病勢を悪化させると考えた。EP4-Tgマウスで作製したAAAモデルマウスの大動脈血管平滑筋層を電子顕微鏡で観察すると大動脈血管平滑筋層で病早期からElastin-contractile unitsが消失することを確認した。また、EP4-Tgマウスで作成したAAAモデルマウスの大動脈血管平滑筋層において圧受容タンパクの発現が病早期から減少していることを見出した。 AAA病早期から血管平滑筋細胞周囲にバーシカン、ヒアルロン酸複合体に富んだ細胞外基質が形成され大動脈血管平滑筋細胞は弾性線維との接着を失い、血管にかかる圧受容に異常をきたしAAAを発症/増悪させると考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管平滑筋におけるバーシカン、ヒアルロン酸複合体がAAAの発症/増悪に関与することを示唆する結果を現在までに得られている。また、in vitroにおいてもバーシカン、ヒアルロン酸複合体がEP4シグナルにより増加し、細胞外基質を形成していることを確認していている。当初の仮説を裏付けるものでおおむね順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
血管平滑筋で過剰に産生されるバーシカンがAAAの病態を悪化させると仮説をたてた。Vcanfl/fl;Myh11-CreERT2、Vcanfl/fl;MYH11-CreERT2;EP4-Tgを作製しAAA疾患モデルマウスを作製する。血管平滑筋におけるバーシカンの過剰産生が抑制されることでAAA発症/増悪が抑えられるかを検討する。 血管平滑筋細胞周囲にバーシカン、ヒアルロン酸複合体に富んだ細胞外基質が形成され大動脈血管平滑筋細胞は弾性線維との接着を失い、血管にかかる圧受容に異常をきたしAAAを発症/増悪させることをより強固に証明するべく、バーシカン増加が血管平滑筋細胞のメカノセンシングに与える作用の検討を行う。
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