研究課題/領域番号 |
23K15653
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
水谷 克洋 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30626726)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 動脈瘤 / 造影CT / 弾性板破綻 / ラット脈管解剖 / コイル塞栓術 / 免疫抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
くも膜下出血の原因となる動脈瘤の治療法の一つとしてコイル塞栓術があるが、治療後の再発が一定の割合で起こることが問題となっている。一般的にはコイルなどの異物を瘤内に挿入することで、瘤内での炎症や血栓化を促し、それが最終的に瘤の閉塞につながるという考えられている。しかし一方で長期的には瘤壁の過度の炎症は動脈瘤の壁の脆弱性や不安定性を引き起こし、動脈瘤の治療後の再発につながることがいくつかの報告で示唆されている。本研究の目的は瘤壁の炎症を抑制する治療が動脈瘤のコイル塞栓術後の再発予防につながるのではないかとの仮定をもとに検証を行う予定である。
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研究実績の概要 |
実験開始から一年をかけて動脈瘤モデルの構築および動脈瘤モデルの評価を行なった。動脈瘤モデルは当初ウサギを用いることを考えていたが、管理のしやすさと、頭蓋内での動脈瘤モデルの方が生理的なモデルであると考えラットを用いた頭蓋内動脈瘤モデルに変更した。過去に報告のあったモデル(Surg Neurol 11: 243-246, 1979)を用いて片側腎動脈結紮及び総頸動脈結紮による血行力学的負荷及びbeta-aminopropionitrile (BAPN)及び高塩分食を負荷を行なうことで動脈瘤を形成するモデルを使用した。上記、処置後2週間程度で弾性板の破綻などの動脈瘤形成の初期段階が確認された。 また最終的な動脈瘤の治療を考える上で、動脈瘤形成や成長の病態や過程を明らかにすることは必須と思われた。形態的な評価や血行力学的な負荷についても検討が必要と考え、Computed flow dynamics(CFD)を用いた解析を追加することを検討した。そのためCFDの解析に耐えうるラットにおける微細な造影CT撮影プロトコルの確立を試みた。 ラットに腹腔麻酔を行い、尾静脈から造影剤を注入し、頭蓋内の撮影を行なった。造影剤の注入量や注入速度、撮影タイミングを工夫することでCFDの解析に耐えうる画像を取得できる撮影プロトコルを確立した。造影CT撮影によりラットの頭蓋内動脈・静脈の解剖構造が詳細に観察できるようになった。従来報告されていたラットの海綿静脈洞の解剖において、今回観察された造影CTでの観察結果の間に齟齬があることが副次的に明らかになったため、この内容をJ Vet Anat 2024;17:19-29にて報告を行なった。また今後ある程度以上の瘤形成がされれば造影CTによりラットの解剖を行わなず動脈や瘤の形態変化を確認できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の予定として安定した動脈瘤モデルを作成するまでを目標としていたため概ね順調と思われる。 造影CTによる血行力学的負荷の解析については当初予定していなかったが、ラットの詳細な動脈・静脈解剖を造影CTで観察することが可能となった。それにより副次的に新規の知見も得られたため、この点では予定よりも進展していると思われるが一方で動脈瘤については初期段階の弾性板の破綻といった現症は観察されているが、はっきりとした瘤形成は観察されていない。今後、長期的な動脈瘤モデルの観察を行い、形態的な瘤の観察が必要になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、短期的な研究の推進方向としてまず①瘤形成・成長に影響を与えているCFDからわかるFlow parameterの同定を行い、②免疫組織学的検討を動脈瘤の組織検体に対して行いFlow parameterと照らし合わせ瘤形成・成長のメカニズムについて解析を行い、瘤壁において炎症系シグナル伝達系の関わりなどの解析を行うことを目標とする。ここまでを次年度の目標と定める。続いて③免疫抑制剤の局所投与(髄液投与)などにより瘤の形成・成長に与える影響を組織形態変化及びシグナル伝達系における変化として観察し、本研究の目標である動脈瘤に免疫抑制剤を塗布したコイルを挿入した時の瘤壁に与える影響を解析することを続く目標として研究を推進する予定である。
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