研究課題/領域番号 |
23K15661
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松原 博文 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (00800244)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | くも膜下出血 / Ferroptosis |
研究開始時の研究の概要 |
くも膜下出血(SAH)のような脳障害の機序解明及び治療薬の開発は、早急の課題である。そのなかでも、フリーラジカルがSAH後の神経細胞死や機能障害に関与することが注目されており、フリーラジカル捕捉薬がSAH後の神経機能改善として期待されている。しかし、現在使用されている唯一のフリーラジカル捕捉薬エダラボンは、腎機能障害を併発するリスクがあるため、使用に制限があり、新たなフリーラジカル捕捉薬の開発が期待されている。そこで、新規フリーラジカル捕捉薬であるNSP-116と、神経細胞死の一経路であるferroptosisに注目し、フリーラジカルが及ぼす新たな脳障害のメカニズム解明、及びSAHに対する新たな治療法の可能性を模索する。
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研究実績の概要 |
SAHの早期障害のメカニズムとして微小血栓が生じることが報告されている。これまでの工程で確立したIn vivo系においてナイロン糸を用いた穿孔型SAHモデルを使用し、微小血栓の抑制に関与しうるナファモスタットの使用が神経学的予後の改善につながることを報告した。次に、新規フリーラジカル捕捉薬であるNSP-116の有効性について再現性を確かめるべく、同モデルを用いて検討を行なった。使用したマウスモデルはsham、vehicle、NSP-116の3群とし、vehicle群にはNSP-116の溶媒である0.5% CMCをNSP-116群には既報に基づき30mg/kgをそれぞれ術前後に経口投与とした。合計44匹のマウスを使用し、手技施行から24時間後の行動試験、血腫量、脳血流、体重変化を計測し、sham群と比較すると、vehicle、NSP-116群ではいずれの評価項目も有意に低下していたが、NSP-116投与による有意な神経学的改善は証明しえなかった。次に、上記試験で使用したマウスの全脳を用いてWestern blotting法でferroptosisとの関連が報告されているGPX4および4HNEの発現について測定した。しかし、本検討においてもこれらの発現に有意差を見出すことができなかった。 また、In vitroの検討においてはSAH後の状態を模した低酸素およびトロンビン負荷を用いた実験系を確立させた。特にヒト脳微小血管内皮細胞においてはSAH後に生じる微小血栓によって生じる障害と、その血栓形成を抑制するナファモスタットの有効性についてそのメカニズムを証明・報告しており、今後はこれらとferroptosisの関連について検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでにSAHモデルに対するナファモスタットの有効性についてすでに論文化させているが、これとferroptosisとの関連については現在検討中である。また、上記試験においてNSP-116のin vivoでの有効性が未だ証明できていないが、これまでの報告からferroptosisがSAHの早期脳障害に関与していることは明らかであり、サンプリング時間を変更しin vivoでの検討を継続する。今後は早期障害のみではなく、長期障害に着目し、白質障害や認知機能検査なども評価してく予定である。また、in vitroの検討においてSAH後の障害を模した実験系を確立できており、ferroptosisとの関連についてferrostatin-1を用いた変化を検討し、その効果や新規治療メカニズムの解明を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
SAHモデルでのferroptosisに伴う変化がこれまでに行なった全脳を用いたWestern blotting法では証明しえなかったため、shamとvehicle群のSAHから24時間後の切片サンプルを作成し、その変化について検討を行なった。鉄蓄積マーカーであるferritinを蛍光免疫染色法で評価したが、鉄蓄積は皮質や基底角では生じておらず、主に脳梁に代表される白質に認められていることが証明された。SAH後の障害がこれまでに多く報告されている皮質に生じているわけではなく、白質に生じている可能性が示唆されており、今後白質に着目した検討を行う予定である。In vivo, in vitroの両検討において、ferroptosis関連因子の発現を再確認し、悪化のメカニズムや神経保護の可能性について検討を行う。
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